【行政事件訴訟法】執行停止と差止め訴訟の違い(と、その他)

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今回は、多くの受験生が迷われている以下の違いについてご説明します。

「執行停止」「差止訴訟」の違い
「執行停止」「非申請型義務付け訴訟/差止め訴訟」「仮の義務付け/仮の差止め」要件の違い

 

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①「執行停止」と「差止め訴訟」は何が違うのか?

どちらも「処分を止める」という効果は同じですよね?
だから迷われる方も多いと思います。

 

ただ、この2つは全くの別物なのです。

 

「執行停止」は、「取消訴訟」を訴えている人が「申し立てる」ものです。
処分の取消しを訴えていても、原則は「執行不停止」ですから、
訴訟の最中に処分がされて損害が出てしまうかもしれませんよね?

だからそれを一旦止めて下さい、と求めるのが「執行停止」です。

あくまで「取消訴訟」のオプションとして申し立てるものです。
(この取消訴訟のことを「本案」と言います)

 

これに対し、「差止め訴訟」は、それ自体が本案です。
(「訴訟」と名前がついていますからね)
「差し止める」こと自体が目的なのです。

 

そして、申立ての時期も違います。

「取消訴訟」は、処分がされた「後」に訴えるものです。
処分が行われたので、「それ取り消して!ついでに執行も停止して!」
というのが執行停止です。

 

「差止め訴訟」は、処分がされる「前」に訴えるものです。
行政庁が処分をしようとしているので、「止めなきゃ!」
というのが差止め訴訟です。

お分かりいただけたでしょうか。

 

②要件の違いをチェック!

訴訟要件の違いは一番混乱するところです。
でも、一回前提となる知識をつかんでしまえば、忘れてしまってもすぐ思い出せるようになりますので安心してください。

 

まずは、おさらいのために要件を書き出してみましょう。

 

執行停止
・原告の申立て
・重大な損害を避けるため緊急の必要がある
・本案について理由がないとはみえない
・公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがない

差止め訴訟/非申請型義務付け訴訟
・処分又は裁決がされることにより重大な損害を生ずるおそれがある
・その損害を避けるため他に適当な方法がない

仮の差止め/仮の義務付け
・原告の申立て
・償うことのできない損害を避けるため緊急の必要がある
・本案について理由があるとみえるとき
・公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがない

 

これだけ見ると「あー!やっぱり覚えられない!」と思ってしまいますか?
落ち着いてください。
覚え方のヒントを差し上げます!

 

【ヒント1】それは訴訟なのか?申立てなのか?

申立てであれば、それとは別に本案(訴訟)があるということです。
となると、「本案に理由が~」が要件に入ってきます。
そして、「申立て」なのですから「原告の申立て」が要件となります。

また、「申立て」には「公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがない」という特有の要件があります。(※これは訴訟の要件にはありません)
だって訴訟を提起するのに「私の訴えは公共の福祉に重大な影響を及ぼすかな?」なんて考えませんよね?あくまで行政庁が「申立て」られたものを実行する場合のみに考えられるものなのです。

 

【ヒント2】行政庁を力づくで動かすのは最終手段

要件を見ると分かりますが、「差止め訴訟/義務付け訴訟」の要件は他の2つと少し違いますよね?
一番大きな違いは、「その損害を避けるため他に適当な方法がない」という点。これは「補充性の要件」と言われています。

なぜ補充性の要件があるかといえば、差止め訴訟も義務付け訴訟も、「処分させない!」もしくは「処分しろ!」と行政庁を力づくで動かすものなのです。

そのため、そんな強い手段は、他に方法がないときだけに限る、とされているのです。

 

【ヒント3】「償うことのできない損害」「仮」にだけの要件

重大な損害か、償うことのできない損害か、の違いについてはとても簡単です。
「償うことのできない損害」は、「仮の差止め/仮の義務付け」だけの要件です。

「償うことのできない損害」というのは、「重大な損害」よりもさらにすごい損害だと思って下さい。

仮にとはいえ、行政庁を強制的に動かすのですから、それだけハードルが高くなりますよ、ということです。

 

【ヒント4】「理由がないとはみえない」「理由があるとみえる」の違いは、本案の勝訴の可能性

執行停止の要件である「本案に理由がないとはみえない」と、
仮の~の要件である「本案に理由があるとみえる」はどう違うのでしょう。
似た表現ですからややこしいですね。

「本案に理由がないとはみえない」とは、本案である取消訴訟で「敗訴はしそうにない」ということです。

「本案に理由があるとみえる」とは、本案である差止め(または義務付け)訴訟で「勝訴する可能性が高い」ということです。

つまり、「執行停止」のハードルは低く、「差止め/義務付け」と「仮の~」のハードルは高くなっているということですね。後者の方は行政庁を力づくで動かすものなので、それだけ厳しくなっているということがここでも分かります。

 

上記のヒントをもとに、改めて要件を書き出してみます。

 

執行停止 (取消訴訟のオプションだから、申立て!)
・原告の申立て (申立てなんだから、当然必要ですよね!)
・重大な損害を避けるため緊急の必要がある (これはそのまま覚えましょう!)
・本案について理由がないとはみえない (敗訴はしそうにない)
・公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがない (申立てのときだけの要件!)
差止め訴訟/非申請型義務付け訴訟 (訴訟だから、「本案について」なんて要件は不要!)
・重大な損害を生ずるおそれがある (そのまま覚えましょう!緊急性が不要な点だけ注意)
・その損害を避けるため他に適当な方法がない (行政庁を強制的に動かすのは最終手段!)
仮の差止め/仮の義務付け (差止め訴訟・義務付け訴訟のオプションだから、申立て!)
・原告の申立て (申立てなんだから、当然必要ですよね!)
・償うことのできない損害を避けるため緊急の必要がある (償うこと~は「仮」だけの要件!)
・本案について理由があるとみえるとき (勝訴の可能性が高いときだけ!ハードル高い!)
・公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがない (申立てのときだけの要件!)

 

といった感じです。
だいぶ覚えやすくなったのではないでしょうか。

忘れてしまったときは、何回も見直して思い出してみてください。

 

文中で、義務付け訴訟のことをあえて「非申請型」と書きましたが、
これについては後日説明をしたいと思います。

また、消極要件と積極要件の違いもチェックしておいてください。

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