【行政事件訴訟法】「訴えの利益」がないとされた判例と、あるとされた判例

sponsor link

行政事件訴訟法における取消訴訟の要件は、「処分性」「原告適格」「(狭義の)訴えの利益」「出訴期間」「裁判管轄」「被告適格」の6つです。
これを満たさない訴えは却下となります。(※棄却ではありません)

今回はこのうち、「訴えの利益」について注目します。

sponsor link

「訴えの利益」とは

「訴えの利益」とは、ざっくりいうと「取消訴訟を行うメリット」です。
メリットがない人は訴えてもダメだよ、ということですね。

上の方で「(狭義の)」と書きましたが、「訴えの利益」には広義狭義の2種類あります。

広義の訴えの利益」とは、原告が取消訴訟を行うにあたって法律上の利益を有していることを意味します。つまりこれは、訴訟要件のうちの「原告適格」のことです。

狭義の訴えの利益」とは、その法律上の利益が、処分を取消すことによって回復することを意味します。回復しなければ、処分を取消したとしても意味がありませんからね。だから原告適格とは別の要件になっているのです。

そしてこの点が出題されるときは、訴えの利益があるかないかだけです。
知っていれば簡単に解けますので、確実に押さえておきましょう。

訴えの利益は「失われる」とされた判例

建築確認の取消しを求める訴えの利益は、工事が完了したら失われる
(もう完成してるから、取消しても意味がない)
保安林指定の解除の取消しを求める訴えの利益は、代替施設が設置されると失われる
(もう安全だから)
生活保護の変更決定の取消しを求める訴えの利益は、受給者が死亡することで失われる
(受給する人がいなくなったから)
外国人の再入国不許可処分の取消しを求める訴えの利益は、再入国の許可を得ないまま出国した場合には失われる
(そもそもの在留資格が消滅するから)
特定の日の公園使用の不許可処分の取消しを求める訴えの利益は、その日を経過すると失われる
(もう過ぎちゃっているから)
保育園廃止処分の取消しを求める訴えの利益は、原告の保育の実施期間が満了すると失われる
(もう保育園に入らないから)
土地収用法による明渡裁決の取消しを求める訴えの利益は、明渡しに関わる代執行が完了すると失われる
(もう明渡しが完了して建物がないから)
運転免許停止の取消しを求める訴えの利益は、何事もなく1年経過すると失われる
(1年経過すると前歴がなくなるから)
市街化区域における開発許可の取消しを求める訴えの利益は、工事が完了し、検査済証が発行されると失われる
(市街化区域は開発が原則自由で、すでに工事が完了しているから)

 

訴えの利益は「失われない」とされた事例

以下は、逆に訴えの利益はあるとされたものです。キチンと区別をつけておきましょうね。特に「免許」と「開発許可の取消し」の判例!!

市街化調製区域における開発許可の取消しを求める訴えの利益は、工事が完了し、検査済証が発行しても失われない
(市街化調製区域は適法な許可がなければ開発できず、予定していた建築物の建築を立てるためにまだ利益が残るから)
運転免許「取消」処分の取消しを求めている間に免許証の有効期間を経過しても、訴えの利益は失われない
(なぜなら、免許の有効期間が切れたとしても、取消処分が取消されれば「更新」ができるから
運転免許「停止」処分を受け、その期間が満了しても、違反点数が残っているうちは、訴えの利益は失われない
(なぜなら、違反点数が残っていると再度処分を受けたときに加重されてしまうから)※1年経って点数がなくなると訴えの利益は消滅
運転免許の更新時に一般運転者として扱われ、優良運転者ではない免許証を交付された者は、訴えの利益を有する
(優良運転者の要件を満たす者であれば、その記載の免許証を交付される法律上の地位を有するから
懲戒免職を受けた公務員がその処分を取消訴訟で争っている間に本人が議員に立候補した場合でも、訴えの利益は失われない
(公務員が議員に立候補するとその時点で自動的に失職しますが、処分が取り消されれば公務員時代の給料や退職金はもらえるから
公文書の非公開決定の取消訴訟において、その公文書が書証として提出された場合でも、訴えの利益は失われない
(公文書の内容を知ることができたとしても、それはあくまで裁判所に提出されたからであって、手続きに則って公開されたわけではないから
土地改良事業における事業施工認可処分に対する取消訴訟は、工事が完了した場合でも、訴えの利益は失われない
(社会通念上元に戻すことが不可能であっても、認可処分を取消せば、換地処分など他の法的効力にも影響するため訴えの利益は残るから)

コメント