行政不服審査法を勉強していて、「書類名」に頭が混乱したことはないでしょうか?
審査請求の審理は原則書面で行われるので(書面審理主義)、プロセス毎に色んな書類が出てくるのですよね。
弁明書、反論書、意見書、審理員意見書、事件記録など。
こうした書類について、誰が出すのか、いつ出すのか、義務なのか任意なのか、などを覚えないといけないのがややこしいところです。
今回はそれをスッキリさせていきましょう。
とりあえず流れをおさらい
審査請求の流れにおいて、どの時点でどの書類が出てくるのかを見てみましょう。
(※書類に焦点を置くため、その他の流れは省略しますよ)
★審査請求スタート!
(※審査請求録取書の場合もあり)
↓
審理員は、直ちに処分庁に対し審査請求書を送付し、弁明書の提出を求める
↓
↓
審理員は、弁明書の写しを審査請求人に送付し、反論書の提出を求める
↓
(※参加人がいれば、参加人も意見書を提出できる)
↓
表にするとこんな感じです。
審査請求人 | 審理員 | 処分庁 | |
---|---|---|---|
1 | 審査請求書 | ||
2 | 弁明書 | ||
3 | 反論書 (参考人は意見書) |
||
4 | 審理員意見書 事件記録 |
それでは一つずつ見ていきましょう。
流れをストーリーでとらえれば書類の意味が頭に入りやすい
これらを覚える際、そのまま覚えてもいいのですが、どういう趣旨の書類なのかを流れで理解しておけば、忘れてしまっても思い出しやすくなります。
なので、少しずつ補足説明をしておきますね。
審査請求書
まず、最初に提出されるのは審査請求人による審査請求書です。
もうそのままですから、これは分かると思います。
ただ、余裕があれば追加で覚えておきたいのは、審査請求録取(ろくしゅ)書ですね。
これは、口頭で審査請求が行われた場合に、陳述の内容を記録した書面です。(記「録」を「取」ったもの)
マイナーな用語ですが、過去問の中に出てきたこともあるので、急に問われても「なんだコレ?」とならないように覚えておきましょう。
弁明書
審査請求書が審査庁に届くと、審理員が指名されて対応します。
審理員は、処分庁に対して「お宅の処分に納得できないと言っている人がいますよ。なんで処分したのかキチンと弁明(説明)してあげてね」と求めます。この場合の弁明の意味は「処分の意味を相手に説明し、理解してもらうこと」です。
そして、処分庁は「かくかくしかじかで処分したんですよ」と答えます。これが弁明書です。
なお、この弁明書の提出は「義務」となっていますので注意してください。
弁明書の提出は義務で、相当の期間内に提出しなければならない。
反論書
処分庁から弁明書が提出されると、審理員はその写しを審査請求人に送付してこういいます。
「処分庁はこう言ってますよ。何か反論はありますか?」
すると審査請求人は「処分庁に対して反論がある!」と思うかもしれません。その時に出すことができるのが反論書です。
(このとき、証拠書類などがあれば一緒に提出することができます)
ただし、反論書の提出はあくまで「任意」です。
「審査請求書に書いたからもういい」と思えば出さなくてもいいわけですね。
反論書の提出は任意。
意見書
もし参加人がいた場合は、参加人は意見書を提出することができます。
こちらも任意です。
審理員意見書
双方の言い分が出揃うと、審理員は「うーん、ワタシ的にはこう思いますね」と意見をまとめて審査庁に提出します。それが審理員意見書です。
これは文字通りなので混乱することはないでしょう。
ただ、押さえておきたいのは「遅滞なく作成する」という部分です。
作成するのはそれなりに時間がかかるので、「速やかに」だと時間が足りなくて困るわけですね。
そのため、「遅れない程度に急いで作ってね」という要請になっています。
ただし、作成が終了したら、速やかに提出することが求められています。
作成したら提出は「速やかに」
事件記録
事件記録は、審査請求において提出された書類全般や意見陳述の記録などです。
これを審理員意見書と共に、速やかに審査庁に提出することとされています。
コメント
分かりやすい説明で助けて頂いております。
さて、行政不服審査法第43条44条がよく理解できません。ご教示頂けますと幸甚に存じます。
ryouheiさん、コメントありがとうございます。
行政不服審査法43条「行政不服審査会等への諮問」と、44条「裁決」でしょうか?
43条は、審査庁が審理員意見書の提出を受けた時は、原則として行政不服審査会へ諮問するという内容です。
諮問したら、請求人たちにその旨を通知し、審理員意見書の写しを送付することを規定しています。
このあたりはポイントさえ押さえておけば、あまり深入りする必要はないと思います。
また、44条は、ほぼ条文の内容そのままかと思います。