行政事件訴訟法には、「事情判決」という制度があります。(行政事件訴訟法第31条)
取消訴訟において、「行政処分は違法なんだけど、取消しを認めると大変なことになっちゃうんだよねぇ~・・」という場合に
「ごめんね!違法なんだけど取消しはできません!棄却させてもらいます!」
という制度です。
例えば、土地改良事業において、工事が進んで100人以上が換地まで完了している段階で
「事業の認可処分が違法だったので原状回復してねー」
と言ったとしたら、「いやいや、もうムリでしょ(汗)」ってなりますよね。
そうした場合は、違法ではあることは認めながらも、事情が事情なので、原状回復はしないことにするわけです。
言い換えれば、私人の利益よりも公益の方を優先させるということですね。
事情判決については過去に何度か出題されていますが、問われる内容は似たようなものが多いです。覚える知識は限定的なので、まとめておさらいしておきましょう。
これだけ押さえておきましょう
●請求は「棄却」です。「却下」ではありません。
●処分が違法であることは「主文」で宣言されます。「判決の理由」ではありません。
●事情判決の訴訟費用は被告の「行政庁」が負担します。実質的には行政庁の敗訴のため。
●事情判決が出ても「上訴」はできます。(原告、被告どちらも可能)
●義務付け訴訟や差止め訴訟には準用されていません
行政事件訴訟においては「取消訴訟」「民衆訴訟」「機関訴訟」のみに事情判決があります。
行政事件訴訟においては「取消訴訟」「民衆訴訟」「機関訴訟」のみに事情判決があります。
●公職選挙法では準用されていません
しかし、一票の格差についての裁判において、事情判決の「法理」によって「違憲ではあるけれど選挙は有効」とされたことがあります。
しかし、一票の格差についての裁判において、事情判決の「法理」によって「違憲ではあるけれど選挙は有効」とされたことがあります。
●行政不服審査法にも事情「裁決」という似た制度があります。こちらは違法だけでなく「不当」も対象です。(行政不服審査法第45条3項)
●事情判決そのもので損害賠償が命じられることはありません。
損害賠償を求めるには、国家賠償請求が必要です。
損害賠償を求めるには、国家賠償請求が必要です。
なお、先ほど土地改良事業の例を出しましたが、工事が完了して、社会通念上原状回復ができなくなっても、事業の認可処分を取消す「訴えの利益」は消滅しないという判例が出ています。
原状回復できないという事情判決の問題と、訴えの利益の問題は別ということですね。
関連知識として覚えておいてください。
【行政事件訴訟法】「訴えの利益」がないとされた判例と、あるとされた判例
行政事件訴訟法における取消訴訟の要件は、「処分性」「原告適格」「(狭義の)訴えの利益」「出訴期間」「裁判管轄」「被告適格」の6つです。
これを満たさない訴えは却下となります。(※棄却ではありません)
今回はこのうち、「訴えの...
コメント
行政事件訴訟法38条の準用規定が難しいです。宜しければ是非ともこちらに触れていただければと思います。
miyaviさん
コメントありがとうございます。
了解しました☆
ただ、現在海外におりまして…(笑)
来週戻りましたら投稿致しますね。
少々お待ち頂ければと思います。