抵当権が設定されている不動産が第三者の手に渡った場合、その抵当権を消滅させる方法には「代価弁済」と「抵当権消滅請求」があります。
「どっちがどっちにするんだっけ?」と混乱しがちな部分ですよね。
今回はこれをかみ砕いて見ていきましょう。
まずはそれぞれの条文をチェック
抵当不動産について所有権又は地上権を買い受けた第三者が、抵当権者の請求に応じてその抵当権者にその代価を弁済したときは、抵当権は、その第三者のために消滅する。
抵当不動産の第三取得者は、第383条の定めるところにより、抵当権消滅請求をすることができる。
一番大きな違いは、どちらがどちらに対して話を振っているのか、という点ですね。
ここで、「抵当権者」とか「第三取得者」という言葉を使っていると理解しづらいため、例によってキャラクターに登場してもらいましょう。
抵当権者:帝愛会長 兵藤
債務者:A
第三取得者:カイジ
▼現在の状況
Aは兵藤に借金をしていて、その借金のカタとして自らが所有する不動産に抵当権を設定しています。カイジはその不動産をAから取得したところです。
それでは先ほどの内容に戻りましょう。
代価弁済とは
というものです。
兵藤(抵当権者)の方から代価を弁済するようにもちかけているのですね。
抵当権消滅請求とは
というものです。
こちらはカイジ(第三取得者)の方から抵当権の消滅を請求しているわけですね。
ちなみに金額はカイジが自由に提示できます。
これでちょっとは区別がつきやすくなりましたでしょうか。
細かい違いもチェック
さて、一番大きな違いを理解したところで、ついでに細かい違いも押さえておきましょう。
代価弁済できる者は?
代価弁済の場合、カイジは「売買」によって「所有権」または「地上権」を得ていることが条件です。カイジがAの保証人だった場合でも代価弁済はできます。
なお、取得原因は「売買のみ」という点に注意してください。
・カイジがAから贈与によって得ていた場合
は代価弁済できません。
そもそも「売買代金を払ったら」というのが前提ですから、贈与(無償)ではそれが満たせませんよね。
抵当権消滅請求できる者は?
抵当権消滅請求の場合、カイジは「売買」や「贈与」によって「所有権」を得ていることが条件です。(こちらは贈与でもOKです)
ただし、
・カイジがAの保証人だった場合
・カイジがAから相続によって得ていた場合
・カイジが得たものが地上権だった場合
は請求できません。
保証しなければいけない立場の人が消滅請求できるなんて虫が良すぎますし、相続はAの地位を承継するからです。
(代価弁済において保証人の弁済が認められているのは、あくまで抵当権者からもちかける形だからです)
まとめるとこんな感じです
代価弁済 | ― | 抵当権消滅請求 |
---|---|---|
兵藤(抵当権者) | 誰が言い出すか | カイジ(第三取得者) |
売買のみ | カイジの取得原因 | 売買や贈与など (×相続) |
所有権または地上権 | カイジが取得したもの | 所有権のみ |
認められる | カイジが保証人だった場合 | 認められない |
コメント
はじめまして。
抵当権付き不動産をめぐる、代価弁済と第三者弁済の関係がいまいちわかりません。
第三者弁済の場合、第三取得者が弁済すると、被担保債権が消滅し、付従性によって抵当権も消滅する。更に、第三者弁済をした第三取得者は、債務者に対して求償権を取得する。と理解しています。
これに対して、代価弁済の場合、第三取得者が弁済した代価が、被担保債権額に満たない場合でも抵当権が消滅すると理解しています。
Q1.この場合、被担保債権はどうなるのでしょうか?代価弁済した範囲で被担保債権は消滅し、不足分は無担保債権になるのでしょうか?
Q2.代価弁済の場合、求償権は発生するのでしょうか?
yusukeさん
こんにちは、ご質問ありがとうございます。
以下、回答させて頂きます。
Q1.おっしゃる通りです。代価弁済した範囲で被担保債権は消滅し、もし不足があればその分は無担保債権となります。
Q2.求償権は発生しますが、第三取得者は不動産の売主に対し代金支払債務を負っていますので、それと相殺になります。
Yutaka_0125様
代価弁済は、学部の授業ではほとんど扱われなかったので理解が不十分でしたが、すっきりしました。
ありがとうございました。