【行政事件訴訟法】38条の「準用」を整理しましょう

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行政事件訴訟法38条では、取消訴訟についての各規定を、その他の抗告訴訟にも準用することがある、としています。

「その他の抗告訴訟」とは

無効等確認訴訟
不作為の違法確認訴訟
義務付け訴訟
差止め訴訟

の4つですね。

この準用は、いちいち該当条文を振り返ってみないとよく分からないので、学ぶのがめんどくさい部分ですよね。
今回はこれをスッキリさせましょう。

 

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38条の内容とは?

まずは38条の内容を詳しく見てみましょう。

第1項

第11条から第13条まで、第16条から第19条まで、第21条から第23条まで、第24条、第33条及び第35条の規定は、取消訴訟以外の抗告訴訟について準用する。

以下の規定については、全ての抗告訴訟で使いますよ、と言っています。

・被告適格(11条)
・管轄(12条)
・関連請求に係る訴訟の移送(13条)
・請求の客観的併合(16条)
・共同訴訟(17条)
・第三者による請求の追加的併合(18条)
・原告による請求の追加的併合(19条)
・国又は公共団体に対する請求への訴えの変更(21条)
・第三者の訴訟参加(22条)
・行政庁の訴訟参加(23条)
・職権証拠調べ(24条)
・判決の拘束力(33条)
・訴訟費用の裁判の効力(35条)

数が多くて覚えるのが大変そうですが、見渡してみると「被告適格」「裁判管轄」など、なんとなく「裁判をするにあたっての取り決め」的なものが多いと思いませんか?

なので、こういう取り決めは「すべての抗告訴訟で共通なんだな」とざっくり覚えておけばとりあえずOKです。
あとは、以下で紹介する「一部でしか準用されていないもの」や最後に紹介する「準用されていないもの」を覚えておきましょう。

 

第2項

第10条第2項の規定は、処分の無効等確認の訴えとその処分についての審査請求を棄却した裁決に係る抗告訴訟とを提起することができる場合に、第20条の規定は、処分の無効等確認の訴えをその処分についての審査請求を棄却した裁決に係る抗告訴訟に併合して提起する場合に準用する。

これはちょっと細かい内容ですね。
「無効等確認訴訟」については

・原処分主義(10条2項)※裁決についての無効確認訴訟では、原処分の無効は主張できない
・原処分の無効確認訴訟を併合提起する場合には、被告の同意は不要で、出訴期間の制限にもかからない(20条)

という内容です。

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第3項

第23条の2、第25条から第29条まで及び第32条第2項の規定は、無効等確認の訴えについて準用する。

「無効等確認訴訟」については、以下の規定が準用されることになっています。

・釈明処分の特則(23条の2)
・執行停止(25条)
・事情変更による執行停止の取消し(26条)
・内閣総理大臣の異議(27条)
・執行停止等の管轄裁判所(28条)
・執行停止に関する規定の準用(29条)
・取消判決等の効力(32条2項)

重要なのは釈明処分の特則「執行停止」に関する規定です。
この2つは、取消訴訟以外の抗告訴訟では無効等確認訴訟にしか準用されていません。

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第4項

第8条及び第10条第2項の規定は、不作為の違法確認の訴えに準用する。

「不作為の違法確認訴訟」では、以下の規定が準用されることになっています。

・処分の取消しの訴えと審査請求との関係(8条)
・取消しの理由の制限(10条2項)

8条は「自由選択主義」の規定です。自由選択主義とは、原処分に対してもその審査請求における裁決に対しても訴えることができるということです。
10条2項は先ほどと同じく「原処分主義」に関するものです。

 

表でまとめるとこんな感じ

被告適格や
裁判管轄
原処分主義 釈明処分の特則 執行停止 自由選択主義
無効等確認訴訟 ×
不作為の違法確認訴訟 × ×
義務付け訴訟 × × × ×
差止め訴訟 × × × ×

 

「取消訴訟以外の抗告訴訟」で準用されていないもの

抗告訴訟の範囲では、以下の3つは「取消訴訟」以外に準用されていません。
判断するときの材料にしてください。

・出訴期間
事情判決
・第三者効

(※抗告訴訟ではない当事者訴訟や民衆訴訟、機関訴訟では準用されているものがあるので注意してくださいね)

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