今回のテーマは「訴えの利益」です。
訴えの利益が認められた判例と認められなかった判例はこちらにザザッとまとめてありますのでどうぞ。
さてこの中で、
「開発許可を受けた開発工事が完了し、検査済証まで交付されていた場合」、その開発許可の取消しを求める訴えの利益は
市街化区域であれば失われる
しかし
市街化調整区域であれば失われない
というものがあります。
え、なんで違うの?と思いますよね。
ということで、今回はそのあたりを説明しておこうと思います。
理由が分かっていれば忘れても思い出しやすいと思うので、理解を深めたい方はぜひ押さえておいてください。
「開発行為」とはざっくり言えば土地の造成工事を指します。
また、「検査済証」とはこの土地の造成工事が完了した際に出されるものです。
全体の流れとしては、開発許可→開発行為→検査済証の交付→建築確認→建築物の建築という順番になります。
それぞれの区域の違い
まず、市街化区域とか市街化調整区域とはなんぞや?という話です。
これらは「都市計画法」という法律で定められた都市計画区域の分類です。
無秩序な都市にならないように、「ここはどんどん開発を進めようぜ!」という場所と、「ここはあまり開発しないようにしようぜ」という場所を分けているのです。
では市街化区域と市街化調整区域がそれぞれどういう区域なのかといえば、
市街化区域
どんどん開発を進めていく区域
市街化調整区域
原則として開発しない区域
となっています。
つまり、まったく逆の目的を持った区域なんですね。
言葉は似ていますが、ここは読み間違えないようにしてください。
開発許可の法的効果が変わる
さて、一旦前提に立ち戻って考えてみましょう。
そもそも「訴えの利益がある」というのはどういうことでしょうか。
これは、行政処分を取消すことで回復する法律上の利益があることを指します。
言い換えれば、「取消す意味がある」ということです。
(もし意味がないのなら、訴訟要件を満たさず却下)
この「意味があるかどうか」という点に着目してください。
では、結論に入っていきますが、
なぜ市街化区域と市街化調整区域で、訴えの利益に差がでるのか?といえば、
です。
もともと、どんどん開発を進めていく場所である市街化区域においての開発許可は、「適法に工事を行うことができる」だけの法的効果しかありません。
だから、開発工事が終わって検査済証まで発行された段階であれば、もはやその効果は消滅するので、取消す意味はなくなります。(最判平成5.9.10/最判平成11.10.26)
しかし、本来は開発しちゃダメな場所である市街化調整区域においての開発許可は、「適法に工事を行う」だけではなく、「本来ダメな場所に建築物を建てられる」効果もあるのです。(一般的な禁止の解除)
ですから、開発工事が終わって検査済証が発行された段階であっても、この「予定建築物を建てられる効果」が残っているので、開発許可を取消す意味があるのです。(=訴えの利益が認められる)(最判平成27.12.14)
もしどっちがどっちだったかな?と迷ってしまったら、上記を思い出してみてくださいね。
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