胎児の権利能力はいつから行使できる?

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今回のテーマは「胎児の権利能力」です。

自然人は、「出生」によって平等に権利能力が与えられます。
そしてこの場合の「出生」とは、民法上は「全部露出説」が採られています。
(※母体から完全に離れた時ということ。
一方、刑法上では「一部露出説」が採られていて、一部でも露出すれば出生したとされます)

 

つまり、胎児は「まだ出生していないから、権利能力は認められない」というのが原則です。

 

しかし、そんな胎児であっても認められている権利が3つだけあります。
それが以下です。

●損害賠償請求をする権利
●相続を受ける権利(代襲相続も含む)
●遺贈を受ける権利

 

ほほぅ、これらは胎児の段階でも認められているのか、民法もなかなか気が利いてますなぁ・・

え、でもちょっと待って。
損害賠償を請求するとか、生まれてもいないのに行使できるの・・!?

あ!そっか!代理すればいいのか!
母親とかが胎児の代理人になって請求すればいいんだ!

・・なーんて思っていたりしませんか?

 

違 い ま す

 

これ、意外と誤解している方もいるかもしれません。

さて、ここで有名な判例を見てみましょう。
胎児の権利能力行使についてのリーディングケースです。
イメージしやすいように若干改編してお届けします(笑)

 

のび太としずかは内縁の夫婦で、しずかのお腹の中には小さな命が宿っていた。
しかしある日、のび太は爆走するスネオのスーパーカーにはねられて死亡した。
のび太の親族は代表者としてドラえもんを立て、スネオとの話し合いを行った。
そしてスネオがのび太の親族に示談金を支払うことで和解が成立した。
(この際ドラえもんは、今後一切金銭を請求しないことをスネオと合意した)

その後しずかはのび太の子であるノビスケを生んだが、「ノビスケには損害賠償を請求する権利がある」としてスネオを訴えた。
スネオは「もう和解が成立してる!払う必要はない」と反論した。

(※大判昭和7年10月6日「阪急電鉄事件」)

 

結論としては

ノビスケの損害賠償請求が認められた

という事例です。

 

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何が争点だったのか?

この判決に違和感を覚える人もいると思います。

「えー?和解が成立してるのに請求できるの?」

と。

 

そこで大事なことを理解しなければいけません。
それは、胎児が損害賠償請求権を行使できるのはいつか?ということです。

 

①まだお腹の中にいる時点で権利を行使できるのか?
②それとも生まれてからはじめて権利を行使できるのか?

 

ということです。
なぜかといえば、それによって結論が変わるからです。

 

①お腹の中にいる時点で権利を行使できる
代理人を立てて請求することができる
→ドラえもんはノビスケの立場も代理していたことになり、和解で全て終了している
②生まれてからはじめて権利を行使できる
→まだ生まれていない時点では代理人を立てることはできない
→ドラえもんがノビスケの代理人になることはできないので、和解はノビスケには関係ない

 

そして裁判所が下した判断は、②「生まれてからはじめて権利を行使できる」でした。

これを停止条件説といいます。
生まれるまでは、権利能力が停止している、ということです。

 

よって、ドラえもんが遺族側の代理人となって和解交渉をしても、それはノビスケには関係がないので、ノビスケは改めて損害賠償請求ができることになります。

 

損害賠償請求については、生まれてからしか行使できず、それまでは誰も代理できません。

 

これはしっかりと理解しておきましょう。
過去問ではこんな感じで出ています。

 

 

※あえて「損害賠償請求については」と書いたのは、不動産登記の分野では、胎児の時点でも相続や遺贈による登記を代理して行うことが認められているからです。こちらは解除条件説といいます。つまり実務上、胎児にとって有利になるように使い分けられているのです。
試験に出るのは損害賠償請求についてだけだと思いますから、「停止条件説」の方をしっかり覚えておいてください。

 

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