無権代理は色々な論点があるので、勉強していると知識がごちゃまぜになりがちです。
今回は、無権代理行為が行われた場合に、「本人ができること」と「相手方ができること」についてまとめておきました。
なお、今までに解説済みの「表見代理」と、「無権代理と相続」の論点については以下の記事をご覧ください。
本人ができること
無権代理行為は、原則として「無効」です。
よって、本人は、無権代理人の行為を取り消す必要はありません。
そもそも効力が本人に及ばないからです。
無権代理行為が行われた場合に、本人ができることは、「追認」または「追認拒絶」のどちらかです。
相手方から「追認する?どうする?」と催告がきたときに、どちらかを選択できるのです(催告される前に追認することもできます)。
無権代理行為といっても、場合によっては本人にとって望ましい行為が行われることもありますから、そういうときには、本人は「自分に効力を生じさせてOK」と言うことができるのです。
これが「追認」です。
追認すると、契約の時に遡って効力が生じます。
また、その行為が望ましくない場合は、「だが断る」と言って、自分に効力を生じさせないことを確定させることができます。
これは、相手方からの催告に返事をしなかったときも同じです。
もともと無効な行為であり、本人に効力が生じないのですから、放っておいたときは追認拒絶とみなされるわけですね。
ちなみに、追認も追認拒絶も、契約の相手方に伝わらなければ、その効果を相手方に対抗することができません。
たとえば、無権代理人に対して「いい契約だから追認するよ」と追認した場合でも、それが相手方に伝わる前に相手方から契約の取り消しの意思表示があったときは、取り消しの方が有効となります。
追認するなら、直接相手方にした方がよいですね。
相手方ができること
一方で、無権代理行為の相手方ができることには、「催告」「取り消し」「無権代理人への責任追及」「表見代理の主張」の4つがあります。
なお、相手方が
- 善意無過失
- 善意有過失
- 悪意
の場合で、できることできないことが変わってきますので、それも併せてみていきましょう。
催告
まず、「催告」ですが、これは本人に対して「追認するかどうか」の返答を求めることです。
これは、どんな相手方であってもすることができます。
つまり、無権代理行為だと知っていた「悪意」の相手方であっても、催告はできます。
取り消し
「取り消し」は、文字通り契約を取り消すことです。
「無権代理人なんて知らなかった!この契約はなかったことに!」というわけですね。
これは、相手方が「善意」のときにしかできません。
無権代理人であることを知っていたのなら、「あえて」その契約をしたことになりますから、取消権を認める意味がないからです。
そもそも無権代理行為をした人が悪いわけですから、その分、相手方に便宜を図っているわけですね。
無権代理人への責任追及
これは、無権代理人に対して、「契約通りの履行を請求する」または「損害賠償請求をする」ということです。
「落とし前つけろゴルぁ!」
という感じですね(※こんな乱暴な言葉を使ってはいけません)。
悪意の場合はもちろんできませんし、善意でも有過失であればできません。
さすがに落とし前つけさせるには、過失があっちゃいけない、というわけですね。
表見代理の主張
無権代理行為において一定の条件が満たされた場合には、表見代理が成立することがあります。
よって、相手方はこれを主張して本人に責任を負わせることも可能です。
ただし、表見代理の主張も、善意無過失であることが必要です。
(詳しくは以下の記事参照)
まとめると
こんな感じになります。
しっかり区別できるようになっておきましょう。
善意無過失 | 善意有過失 | 悪意 | |
---|---|---|---|
催告 | ● | ● | ● |
取り消し | ● | ● | × |
無権代理人への責任追及 | ● | × | × |
表見代理の主張 | ● | × | × |
コメント