「即時取得」と「時効取得」は、どちらも“占有”によって、他人の物の所有権を取得することのできる規定です。
第192条(即時取得)
取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、善意であり、かつ、過失がないときは、即時にその動産について行使する権利を取得する。
取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、善意であり、かつ、過失がないときは、即時にその動産について行使する権利を取得する。
第162条(所有権の取得時効)
②十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その占有の開始の時に、善意であり、かつ、過失がなかったときは、その所有権を取得する。
②十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その占有の開始の時に、善意であり、かつ、過失がなかったときは、その所有権を取得する。
(※悪意の場合は今回のお話では省きます)
どちらにも共通する要件は「平穏」「公然」「善意」「無過失」です。
このうち「平穏」「公然」「善意」については、民法186条によってあらかじめ推定されています。
第186条(占有の態様等に関する推定)
占有者は、所有の意思をもって、善意で、平穏に、かつ、公然と占有をするものと推定する。
占有者は、所有の意思をもって、善意で、平穏に、かつ、公然と占有をするものと推定する。
そのため、いずれの場合も取得者側がこれらを立証する必要はありません。
しかし、残った「無過失」だけは「時効取得」と「即時取得」で扱いが異なります。
一方は無過失も推定されるのに対し、もう一方は無過失の立証が必要となります。
どちらがどちらか、お分かりになるでしょうか?
答えは、
「即時取得」 → 無過失も推定されている(立証の必要なし)
「時効取得」 → 無過失を立証する必要あり
「時効取得」 → 無過失を立証する必要あり
なぜかといえば、即時取得は対象が動産に限られているからです。
動産の場合、登記や登録など所有者を公示する制度がないので、前の占有者が適法な権利者であると推定されます。(民法188条)
適法な権利者と推定される人から取引したのだから、取得者も無過失と推定されるわけです。
一方、時効取得の場合は対象に不動産が含まれます。
不動産は登記制度がありますから、所有者が誰かは分かりますし、過失があったかどうかもそこで判断できますよね。
そのため、時効取得に関しては推定されず、立証が必要とされているのです。
即時取得では無過失も推定されているという点は、しっかり押さえておいてください。
●即時取得についてさらに詳しく知るにはこちら
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