さて、今日は前回の補足として、義務付け訴訟について解説したいと思います。
義務付け訴訟には「非申請型」と「申請型」がある、ということはご存知かと思います。
言葉を見れば、非申請型と非申請型の違いは分かりやすいですよね。
非申請型は、申請なんて不要で、直接行政庁に対して「やれよ!」と義務付けをする訴訟です。(「直接型」「1号訴訟」とも呼ばれますね)
申請型は、申請をしたのに行政庁が諾否の応答をしなかったとか拒否されたとか、審査請求が棄却・却下されたとかの場合に、行政庁に対して「やれよ!」と義務付けをするための訴訟です。(「2号訴訟」とも呼ばれます)
ここまでは何となく理解されているのではないでしょうか。
では、それぞれの訴訟要件は?と聞かれて、キチンと答えられますでしょうか?
意外とこの辺りが明確ではない人が多いのではないかと思います。
実はまったく違う訴訟要件!実例をイメージして覚えよう
同じように行政庁に対して「やれよ!」と求める訴えにもかかわらず、実は訴訟要件はまったく違います。
これをキチンと区別しておかないと混乱の原因となるので注意してください。
「非申請型(直接型)」の訴訟要件
●法律上の利益を有する者による訴えであること
●処分又は裁決がされないことにより重大な損害を生ずるおそれがあること(損害の重大性)
●その損害を避けるため他に適当な方法がないこと(補充性)
「申請型」の訴訟要件
●申請または審査請求した者による訴えであること
●申請に対して行政庁の不作為・拒否処分がある、または審査請求に対して棄却・却下裁決があること
●他の訴訟を併合提起すること(不作為の場合は「不作為の違法確認訴訟」、処分や裁決の場合は「取消訴訟」か「無効等確認訴訟」)
はい、見事に違いますね。
これは覚えるのが大変。
さて、ではどのように覚えるといいか?
こういうときは具体的な例でイメージするのが分かりやすいです。
「非申請型(直接型)」は、例えば公害などを思い浮かべてみましょう。
行政庁の許可を得て操業している工場が違法な操業をして、ドバドバと汚染水が川に流れ込んでいるとします。
本来なら、行政庁がこの工場に何らかの処分をしなければならないはず。しかしそれがいつまで経っても為されません。
このままでは汚染が広がって大変なことになりそうです。(損害の重大性)
しかも操業を停止させる権限は行政庁にしかありません。(補充性)
たまりかねた周辺住民が、行政庁に対して「ちょっと何やってんの!工場に処分を命じなさい!」と訴えるのが非申請型(直接型)義務付け訴訟です。
だからこの訴訟単独で訴えられるわけですね。(他の訴訟の併合提起は不要)
これに対し、「申請型」は、例えば
市の保育園に児童を入所させようと申請したら市が拒否したので、「納得できない!その拒否処分を取消しなさい!そして許可処分をしなさい!」と訴えるケースなどを思い浮かべましょう。
この場合、訴えることができるのは当然申請した者だけですよね。
そして、市の拒否処分に対して「取消訴訟」(もしくは「無効等確認訴訟」)を併合提起することが求められます。
こうしてイメージすると、少しは違いが分かりやすくなるのではないでしょうか。
でも「仮の義務付け」の要件は全く同じ!気を付けて!
さて、今までさんざん両者の違いについて語ってきたのですが、実は「仮の義務付け」においては、両者の要件はまったく同じなのです。
なんじゃそりゃー。
いえ・・これはむしろ「覚えやすい!助かった!」と思うべきでしょう(笑)
つまり、非申請型も申請型も、
●償うことのできない損害を避けるため緊急の必要があり
●本案について理由があるとみえ
●公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがなければ
「仮の義務付け」を行うことができます!
併せてチェックしておきましょう。
基本的に、要件の知識が問われる場合は、非申請型(直接型)の方が出題頻度は多いと思います。
しかし、非申請型と申請型の違いなどを題材にした問題もあるので油断はできません。
どちらもチェックしておく必要はありますね。
コメント
いつもありがとうございます。
「非申請型(直接型)」の訴訟要件に「●処分又は裁決がされることにより重大な損害を生ずるおそれがあること」とありますが、「処分又は裁決がされないこと」の間違いではないでしょうか。
mc6665さん、ご指摘ありがとうございます。
おっしゃる通りです。修正致しました。