【行政事件訴訟法】「小田急線高架訴訟」を分かりやすくまとめました

スポンサーリンク

今回のテーマは「小田急線高架訴訟」です。

都市計画事業の認可処分に対し、周辺住民に取消訴訟の原告適格が認められるかどうかが争点となった事例です。

スポンサーリンク

事件の概要

国土交通省は、小田急線の一部区間を「高架式」とする東京都の事業に対し、都市計画法に基づいて事業認可を行った。
しかし、「地下式」を希望していた周辺住民たちが「騒音や振動で生活が脅かされる」として認可処分の取消しを求めた。

論点

①周辺住民に原告適格は認められるか
②原告適格が認められるとして、行政庁に裁量の逸脱濫用があったか

押さえておくべきポイント

周辺住民に原告適格は認められるか

認められる

原告適格の「法律上の利益を有する者」とは、処分によって「自己の権利」もしくは「法律上保護された利益」を侵害される者か、侵害されるおそれのある者である。

「法律上保護された利益」は、根拠法令の「文言」だけでなく、その「趣旨・目的」(関連法令のものも含む)や、処分によって害される利益の「内容・性質」「態様・程度」も考慮して判断する。行政事件訴訟法第9条2項

今回の根拠法である都市計画法には、騒音や振動による健康や生活環境の被害を防止する趣旨・目的がある。

もし違法な都市計画が行われると、周辺住民の健康や生活環境は著しく悪化する。そして距離が近ければ近いほど、大きな被害を受ける。

これは「不特定多数の具体的利益を一般的公益の中に吸収させただけ」でなく、周辺住民が健康や生活環境に被害を受けないという「個別的利益」としても保護する趣旨を含む。

よって、直接的に被害を受けるおそれのある周辺住民には、法律上保護された利益があり、原告適格が認められる。

 

行政庁に裁量の逸脱濫用があったか

ない

都市計画の内容の適否については、
①事実誤認など、重要な事実の基礎を欠くか、
②判断過程において考慮すべき事情を考慮しないなど、社会通念上著しく妥当性を欠いている
場合にのみ裁量権の逸脱または濫用となる。
本件は行政庁の裁量の範囲内である。

 

 

原告適格とは、処分や裁決の取消しを求めるにつき「法律上の利益」を有していることをいいます。
原告適格がなければ、その時点で訴訟要件を満たさないため却下となります。

今回の事例では、処分を受けたのは東京都ですが、処分の相手方ではない周辺住民にも「法律上の利益」が認められました。

その理由としては、都市計画法が、周辺住民に対して「健康や生活環境に被害を受けない」という具体的利益を、「一般的公益」だけではなく、「個別的利益」としても保護しているから、ということです。

どういうことかというと、事業地のすぐ隣に住んでいる人と、少し離れたところに住んでいる人とでは、同じ周辺住民でも受ける被害の程度が違うわけです。

だから、「みんなひっくるめて一般的公益」で済ませることはできず、「直接的に被害を受けるおそれのある個々の住民」については「個別的利益」があると解されたわけです。

なお、原告適格は認められたものの、その後の本案審理に関しては、「裁量の範囲内」ということで、一刀両断となっております。
こちらはサラリと見ておけばいいと思います。

行政法
スポンサーリンク
スポンサーリンク
Yutaka_0125をフォローする
スポンサーリンク
1日5分で学べる行政書士試験ブログ

コメント

  1. ryouhei より:

    おはようございます。
    小田急線高架訴訟のまとめ記事ありがとうございました!
    お陰様で理解できました!