行政事件訴訟法における取消訴訟の要件は、「処分性」「原告適格」「(狭義の)訴えの利益」「出訴期間」「裁判管轄」「被告適格」の6つです。
繰り返し言いますが、これを満たさない訴えは却下となります。(※棄却ではありません)
今回はこのうち、「原告適格」に注目します。
「原告適格」とは
「原告適格」とは、訴訟を提起する資格があること(=原告になることができること)をいいます。
もちろんここでの“資格”とは、試験を受けて取得するような資格ではなく
訴えを起こしてまで、守るべき「法律上の利益」があること
を指します。
この「法律上の利益」は、行政事件訴訟法第9条において規定されていますが、もともとは限定的で狭く解釈されていたため、訴えを起こしても「適格なし」として却下されてしまうことがほとんどでした。
しかしこれでは行政訴訟自体が機能しないため、平成17年の改正において第2項が追加され、解釈の拡大が図られるようになりました。
つまり、今までは根拠法令の文言でしか判断されなかったものが、
①法令の「趣旨」「目的」
②利益の「内容」「性質」
も考慮に入れることとし、
さらに
①法令の「趣旨」「目的」を考慮するにあたっては、
その法令だけでなく、関係法令の趣旨、目的も参酌し(=参考にし)
②利益の「内容」「性質」を考慮するにあたっては、
その法令に違反して処分がされた場合に害される利益の内容、性質、程度も勘案する(=総合的に判断する)
ことになったのです。
これによってグッと原告適格の幅が広がりました。
では、その法改正以前のものも含めて、原告適格が認められた判例と認められなかった判例を見ていきましょう。
原告適格が認められた例
(公衆浴場は距離制限が定められており、既存浴場の利益は反射的利益にとどまらないから)(S37.1.19 公衆浴場距離制限規定事件)
※「質屋」の判例との違いに注意しましょう。
(医療施設には位置基準が定められており、健全で静穏な環境で営業する利益が保護されているから)(H21.10.15)
※場外車券販売施設の「周辺住民」との違いに注意しましょう。
(生命・身体に直接的な被害を受けるおそれがあるから)(H9.1.28)
(もう一方の免許が取り消されれば、自己が免許を受けられるから)(S43.12.24)
原告適格が認められなかった例
(既存業者の営業場の利益は反射的利益にすぎず、法律上保護された利益ではない)(S34.8.18)
(周辺住民の生命、身体の安全や健康が脅かされたり、財産に著しい被害が生じたりはしないから)(H21.10.15)
(一般消費者が受ける利益は反射的な利益ないし事実上の利益であって、法律上保護された利益ではない)(S53.3.14 主婦連ジュース事件)
(処分の根拠は市の条例であり、国の個別的利益を保護する趣旨は含まれないから)(H13.7.13)
(S60.12.17)
(H元.4.13 近鉄特急料金訴訟)
(H元.6.20)
(H10.12.17)
判例はこの他にもありますが、試験対策上、重要そうなものをピックアップしてあります。
気になる方は他の判例も調べてみてくださいね。
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