地方自治法において、議会と長の関係は頻出分野です。
その中において、長が議会の議決に対して「もう一度検討し直し!」と再議に付すケースがあります。これを長の「拒否権」といいます。
そしてこの拒否権には、長の判断によって任意に行える「一般的拒否権」と、再議に付すことが義務とされている「特別拒否権」とがあります。
さらに、「特別拒否権」は3つの場合があり、それぞれ再議の後にできることが異なるという、若干ややこしい仕組みになっています。
この違いについて、しっかりと理解しておきましょう。
再議に付すことができる場合(一般的拒否権)
これはどのようなときにできるかというと、長が議会の議決に「異議があるとき」です。
議会による議決から10日以内に、理由を示して行使します。
なお、条例または予算に関する議決の場合は、3分の2以上の賛成が必要となります。
再議に付さなくてはならない場合(特別拒否権)
こちらは長に義務づけられているもので、3つの場合があります。
①「違法」な議決があった場合
②「義務費」の削除・減額の議決があった場合
③「非常費」の削除・減額の議決があった場合
一つずつ見ていきましょう。
①「違法」な議決・選挙があった場合
当然といえば当然ですが、違法行為をそのままにするわけにはいけませんよね。
ですから長の義務として、再議(または再選挙)を行わせないといけません。
21日以内に「総務大臣または知事」にに対して審査の申立てを行い、裁定を下してもらうことになります。(都道府県の場合は総務大臣、市町村の場合は知事に申立てます)
裁定に不服があるときは、裁定から60日以内に裁判所に出訴することができます。
②「義務費」の削除・減額の議決があった場合
「義務に属する経費」とは、たとえば人件費など、支出が制度上義務付けられている費用です。
こうした経費は、必要だから組まれているのであって、議会が減らそうとした場合は再検討が必要ということですね。
長は、当初の予算通り経費を支出することができます。
義務費に関しては、満額支出できるという点を押さえておいてください。
③「非常費」の削除・減額の議決があった場合
非常費とは、災害の復旧や感染症予防などのための経費です。
つまり、人の命に関わるとても重要な費用です。
そんな費用を削減する議決については、当然再検討が必要というわけですね。
長はこれを自分に対する不信任の議決だとみなしてよいことになっています。
つまり、10日以内に議会を解散できるわけですね。
非常費という大切な経費をしつこく削減する時点で、もう議会と長の関係は壊れているということなのです。
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