今回のテーマは「自衛隊安全配慮義務事件」です。
自衛隊員に起きた事故に関して、国の「安全配慮義務」が認められるか、そして、国に対する損害賠償請求権の時効は何年とされるかが争われた事例です。
事件の概要
自衛隊員Aは、車両の整備をしていたところ、同僚の運転する車に轢かれて死亡した。
そこでAの親Bは、「国は自衛隊員に対し安全配慮義務を負っている」として債務不履行に基づく損害賠償を請求した。
国は、自衛隊員は特別権力関係にあって安全配慮義務はなく、もし損害賠償が可能だとしても会計法の規定により5年の消滅時効にかかっていると主張した。
押さえておくべきポイント
●国は自衛隊員についても安全配慮義務を負っている。
●国に対する損害賠償請求権の時効は、民法に基づき10年である。
会計法30条は、金銭の給付を目的とする国に対する権利の消滅時効は5年と定めています。
しかしこれはあくまで数多く発生する行政上の権利義務を早く決裁するためであって、偶発的に起こる国への損害賠償請求権までを想定したものではありません。
よって、本件では公法である会計法ではなく、私法である民法が適用されるとしています。
このように、行政法の判例の中には、公法上の法律関係であっても私法が適用になるとされた例がいくつかあります。
一覧で把握しておきましょう。
コメント