行政事件訴訟法を勉強していて、「アレッ」と思う規定の一つが「内閣総理大臣の異議」ではないでしょうか。
僕が初めて見たときは「こんなことができるんだ?」と思いました。
だって行政事件訴訟という司法の領域に、突然「内閣総理大臣」という言葉が出てくるんですからね。
その違和感さもさることながら、その要件はヒッカケ問題として出しやすいものが多いです。
平成23年のように丸々1問出題される可能性は低いかもしれませんが、5肢の1つとして出てきてもおかしくないので、注意しておきたいところです。
内閣総理大臣の異議とは何か?
内閣総理大臣の異議とは、処分の取消訴訟が提起されている状態で、執行停止の申立てがなされたときに、総理大臣が「オイオイ、止めてもらっちゃ困るよ」と裁判所に言える制度です。
ここで既にポイントがいくつかあります。
まず、この異議が認められるのは、「執行停止」に対して、ということです。
いくら内閣総理大臣といえど、取消訴訟の判決が下りてから異議申立てするなんて認められません。(そんなことをしたら、取消訴訟の意味がなくなってしまいます)
あくまで、執行停止にのみ可能なものだと覚えてください。
そして次に、異議を述べるのは、執行停止の決定がなされる前でも後でもよいということです。
つまり、もし決定前に異議が述べられた場合は、裁判所は執行停止をすることができませんし、決定後に異議が述べられた場合は、裁判所は決定を取り消さなければなりません。
それぐらい強力な権限があるのですね。
執行停止という、司法に与えられたはずの制度の最終決定権が、行政のトップにあるというのは不思議です。
異議を述べることができる要件は
無論、それだけ強力な権限を、何の制約もなく使えるわけはありません。
当然のように要件があります。
それは以下のようになっています。
●処分を続行しなければ公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあり
●異議を述べなければならないやむを得ない事情があること
そして、
●そうした理由を附して異議を述べた上で
●次の国会で報告しなければならない
とされています。
国会への報告を義務付けているのは、カンタンに異議を述べたりしないよう慎重にさせるためです。
●公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがなければならない
●やむを得ない事情がなければならない
●理由を附さなければならない
●異議を述べたら、次の国会で報告しなければならない
異議を述べる先の裁判所は
ここもひっかけ問題に出しやすいところです。
異議を述べる先の裁判所は、ケースによって変わります。
●執行停止の決定後 → 決定をした裁判所
●即時抗告がなされている場合 → 抗告裁判所
考えるヒントとしては、「今どこで執行停止を扱っているのか?」ということです。
決定がなされる前であれば申立てのあった裁判所ですし、決定後は決定をした裁判所が扱うことになります。
即時抗告がなされていれば、抗告裁判所が扱っている、というわけです。
ボールのパス回しをイメージして、「今どこにボールがあるのかな?」と考えてみるといいと思います。ボールを持っている人に言う必要があるわけですね。
違憲の疑惑あり?
確かに、行政のトップが司法に対して介入しているわけですから、三権分立を犯しているようにも見えますよね。
多くの方が抱く違和感もそこに原因があると思います。
試験とは関係ありませんが、学説上でも違憲という説の方が多いようなので、今後どのようになっていくか注視しておきたいところです。
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