今回のテーマは、制限行為能力者の相手方の催告における「特別の方式を要する場合」についてです。
相手方の催告権
制限行為能力者の法律行為の相手方には、「催告権」が認められているというお話を以前しました。
↓↓
制限行為能力者は、判断能力が十分でないことから、法律上手厚く保護されているわけです。
そのため、その相手方は、いつ行為を取り消されるか分からないという不安定な立場に置かれるのですね。
そこで、その不安定さを早期に解消するために、1ヶ月以上の期間を決めて「どうすんのよ?返事ちょうだいよ」と、催告ができます。それが相手方の催告権です。
そして、もしその催告に対し、確答がなかった場合は以下のように取り扱われることになっています。
「誰に対して催告するか、によって異なりますので、今一度確認しておきましょう。
催告の相手 | 確答がない場合 | |
---|---|---|
未成年者の相手方の場合 | 本人 | - |
親権者/未成年後見人 | 追認したとみなす | |
成年被後見人の相手方の場合 | 本人 | - |
成年後見人 | 追認したとみなす | |
被保佐人の相手方の場合 | 本人 (※保佐人の追認を得るように催告) |
取消したとみなす |
保佐人 | 追認したとみなす | |
被補助人の相手方の場合 | 本人 (※補助人の追認を得るように催告) |
取消したとみなす |
補助人 | 追認したとみなす |
(※この場合の催告とは「保護者の追認を得るように」というもの)
(※未成年が成年になった場合や、成年被後見人の審判が取消された場合は可能)
さて、ここまでが前回見た内容ですが、ここで新たに「特別の方式を要する行為」について、知識を追加しておきましょう。
特別の方式を要する行為とは
制限行為能力者の保護者は、制限行為能力者に代わって法律行為を行うことが許されます。(保佐人と補助人の場合は、本人の同意を得て代理権付与の審判を受けることが必要)
しかし、その代理人が適切に行動してくれるかどうかは分かりません。
例えば、成年後見人が、成年被後見人の財産を自分のために使ってしまう可能性だってありえます。
本人の判断能力が低いほど、そうした可能性は高くなるでしょう。
そこで、このようなことが起きないよう、保護者の行為を「監督する」立場の人を設けることにしたのが「監督人制度」です。
成年被後見人の成年後見人に対して、「後見監督人」が選任されるといった感じです。
一般的には、弁護士や司法書士などの国家資格者が監督人になります。
さて、ではここで、民法864条を見てみましょう。
第864条 後見人が、被後見人に代わって営業若しくは第十三条第一項各号に掲げる行為をし、又は未成年被後見人がこれをすることに同意するには、後見監督人があるときは、その同意を得なければならない。ただし、同項第一号に掲げる元本の領収については、この限りでない。
このように、後見監督人が選任されている場合に、後見人が一定の行為をしようとしたり未成年者のそれらの行為に同意を与えようとしたときは、後見監督人の同意を得ることが必要となっています。
つまり、後見人が単独ではできないのです。
これがいわゆる「特別の方式を要する行為」です。
(この場合は「監督人の同意」が「特別の方式」ということになります)
さて、では先ほどの表に戻って考えましょう。
「保護者に対する催告が無視された場合は、『追認』とみなされる」とお伝えしたわけですが、ここで例外が生じるわけです。
後見監督人の同意を得なければいけない行為について後見人が催告された場合、自動的に「追認みなし」とはなりません。同意がなければ効果が生じないからです。
よって、催告で定めた期間内に「同意を得た」という旨の通知をしない限り追認の効果は生じず、そうでなければ「取消しみなし」と扱われます。
なんだかややこしいなぁ
と思われたら、とりあえずこう思っておいてください。
コメント