強い付合、弱い付合の違いとは

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今回のテーマは「付合」です。

付合とは、簡単にいえば「くっつくこと」をいいます。
例えば、宝石と指輪をくっつけて「宝石付きの指輪」を作ったとすれば、それは動産が付合したことになります。
また、建物に増築を施して新しい建物の部分ができたら、それは不動産が付合したことになります。

そして、不動産の付合については、「強い付合」「弱い付合」の2種類があるとされています。
強い、弱いとは一体なんでしょうか?
今回はそれを見ていきましょう。

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まずは条文をチェック

不動産の付合
第242条  不動産の所有者は、その不動産に従として付合した物の所有権を取得する。ただし、権原によってその物を附属させた他人の権利を妨げない。

以前の記事で、権原という言葉の意味は学びましたね。
この場合は「根拠のある権利」という意味になります。

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さて、この条文、本文とただし書で分かれていますね。

先に結論からいうと、本文は「強い付合」、ただし書きは「弱い付合」について書かれています。

強い付合とは

付合とは「くっつくこと」と言いました。
つまり、強い付合とは、「強くくっつくこと」を意味します。
これは物理的に強いということではなく、「切り離して考えることはできない」という観念的なものです。

では、強くくっつくとどうなるのでしょうか。
先ほどの条文の本分が該当箇所でしたよね。
改めて見てみましょう。

不動産の所有者は、その不動産に従として付合した物の所有権を取得する。

はい、
Aが所有する不動産に、従として(強く)くっついた物は、Aがその所有権を取得する、ということですね。

これは先ほどのように、既存の建物に増築を施したケースを考えると分かりやすいでしょう。
A所有の建物に増築をしたら、増築部分はAの所有物になる、ということです。

うん、まぁそりゃそうじゃん?Aが増築してるんだから

と思いますよね。
じゃあ、これ、増築したのがBだったとしたらどうでしょう?
お金を出してBが増築しても、Aのものになるのでしょうか。

答えは、「なります」。

仮にBがAの了承を得て増築したとしても、それがただの増築であれば、増築部分はAのものになるのです。

え!そうなの。じゃあBは損しちゃうじゃん

ええ、なので、Bはその分のお金をAに請求することはできるとされています(248条)。
あるいは、増築後の1個の建物について、Aから持分の譲渡を受けることも考えられますね。
とはいえ、法律の原則はあくまでAのものなのです。

なぜ、このような規定になっているかというと、増築部分だけを元の建物から切り離して所有権を考えることはできないからです。

一物一権主義といって、1個の独立した物には1つの所有権しか存在できないからです。

たとえば出窓を増築したとして、建物はAの所有物だけど、出窓だけはBの所有物だよ、ということはできないわけですね。
だって、出窓も含めて1個の建物でしょ、って話ですから。

ということで、出窓は建物の構成部分の一つとなり、全部がAのものになる、というのが、この条文の本文の規定です。

 

弱い付合とは

さて、次に「弱い付合」を見ておきましょう。
強い付合とは、「くっつき方が弱いこと」を意味します。
先ほどと逆と考えると、「切り離して考えることができる」ということになります。

どういうこと?

例えば、A所有の建物に、Bが「独立して住居として利用できる部分」を増築したとします。
イメージ的には、二世帯住宅みたいになったと思ってもらうといいですね。

とするとどうでしょう。
これって、その増築した部分だけで、独立した不動産になりうるんですよ。

マンションってそうですよね。
全体としては一棟の大きな建物ですけど、その中にある一つ一つの部屋が個別の不動産なわけです。

これと同じで、「利用上も構造上も独立している部分」が新たにできたのであれば、そこについてはBの所有権を認めうる、ということなんです。

つまり
既存の建物 → Aの所有権
増築部分  → Bの所有権
ということがいえるんですね。

Aの建物に増築してはいるけれど、必ずしもAのものになるわけではない(=切り離して考えることができる)、というのが、弱い付合なのです。

あらためてただし書部分を見ておきましょう。

ただし、権原によってその物を附属させた他人の権利を妨げない。

ここでの「権原によって」とは、付属物の所有権を留保するための正当な権利ということですから、Aの承諾を得て増築した場合、と解すればよいでしょう。

さすがに何の権利もなく、勝手に増築して「俺のものだぞ」とは言えませんからね。

そりゃそうだ

つまり、強い付合となるか弱い付合となるかの違いは、

・付合した部分に独立性があるかどうか
・(独立性があるとして)ちゃんとした権原によって付合させたかどうか

という2点にあるということですね。

立木の場合

なお、この付合の規定においては、「他人の土地に立木を植栽した場合」という、ちょっと変わったケースもあるので見ておきましょう。

立木は原則として土地の定着物なので、その所有権は土地所有者に帰属します。
ただし、立木法による登記を行った場合や、明認方法を施した場合には、土地とは別の独立した不動産として扱われることになっています。

つまり、他人の土地に立木を植栽した場合は、原則として強い付合になるのですが、上記のような対抗要件を備えた場合には、弱い付合となります。

例えば、Aが所有する土地をBが買い受け、その土地上に立木を植栽したとします。
ところがその後、AはCにもその土地を譲渡して、登記をCに移してしまいました。
この場合、土地については先に登記を備えたCが所有権を取得することになりますので、Bは他人の土地に自分の立木を植栽していることになります。

ただ、Bは、少なくとも実体法上は土地の所有権を得て立木を植栽していますので、権原はあります。

そこで、このケースにおいては、Bがその立木について、Cへの所有権移転登記よりも前に立木に明認方法を施していれば、立木の所有権をCに対抗することができるとされています(最判昭35.3.1)。

なお、無権原で他人の土地に植栽した場合は、原則通り強い付合となり、土地所有者は自由にその立木を処分できます(最判昭46.11.16)。

民法
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