物上代位はこの1ページで総まとめ

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物上代位について苦手意識を持っている方は多いのではないでしょうか。

まず名前がよく分かりませんよね。なんでしょうか「物上代位」って。
こういう法律用語って、もっと聞いた瞬間にイメージできるような名前にして欲しいですよねぇ。

 

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物上代位とは?

物上代位とは、担保物権の目的物が

売却されたり
賃貸されたり
滅失したり損傷したり

して、金銭債権など別の価値に変わったとしても、担保物権の効力が及ぶ、という規定です。

 

一番よく挙げられる例としては以下のようなものですね。

Aは銀行からお金を借りて建物を購入した。
建物には銀行の抵当権が設定された。
ところが、建物が火災によって滅失してしまった。
(※建物の滅失により、銀行は抵当権を実行できなくなる)
この場合、Aは火災保険金を受け取る権利を得るが、銀行はその権利を差し押さえることで、貸したお金の回収をすることができる。

もともと抵当権の目的物は「建物」でしたが、建物がなくなったことによって発生した「火災保険金の請求債権」に代わりに抵当権の効力が及ぶわけですね。

 

上記は「滅失」の場合でしたが、例えば「賃貸」でも可能です↓↓

Aは銀行からお金を借りて建物を購入し、建物には銀行の抵当権が設定された。
Aはその建物をBに賃貸した。
(※AはBから賃料を受け取る権利を持つ)
ところが、Aは銀行への返済を滞らせた。
この場合、銀行はAの持つ賃料債権を差し押さえることで、貸したお金の回収をすることができる。

※賃料は法律用語で「法定果実」といいます。
抵当権の効力は果実には及ばないのが原則ですが、Aが債務不履行をした場合は、果実から回収することが認められています。

 

このように、本来の目的物ではないものから回収することができることを物上代位といいます。代わりの「物」の「上」に「代位」するってことですね。

ただし、払渡し(物の場合は引渡し)の前に差押えることが要件となっています。

 

物上代位が認められない担保物権がある?

物上代位は担保物権において認められるものです。
担保物権といえば、「抵当権」「質権」「先取特権」「留置権」ですが、このうち「留置権」だけには認められません。

なぜかといえば、「留置権」はその物自体を留置する(返さない)ことによって「相手へ支払いを促すもの」なので、別の物に代わるということがそもそも想定されていないからです。

 

留置権だけは、物上代位が認められない。

 

債権が譲渡された場合に物上代位できるか?

物上代位とは、目的物が「金銭債権など」に変わった場合に、それにも及ぶもの、とお伝えしてきました。

では、その「金銭債権」が別人の手に渡った場合は、物上代位できるのでしょうか?

例えば、

Aは銀行からお金を借りて建物を購入し、建物には銀行の抵当権が設定された。
Aはその建物をBに賃貸した。
(※AはBから賃料を受け取る権利を持つ)
Aはこの権利をCに譲渡し、Cは第三者に対する対抗要件を備えた。
銀行はCの債権を差押えることができるか?

債権が譲渡されて、しかも第三者に対する対抗要件まで備えられました。
果たして物上代位できるのでしょうか?

結論からいえば、上記の「抵当権」の場合は物上代位できます。
なぜなら「抵当権」は「登記」によって公示されているので、Cもその債権に物上代位されることは分かっていたハズだからです。

ところが、これは登記のある抵当権だから認められただけで、登記のない「先取特権」には認められません。(判例)
具体例は特に載せませんが、結論だけ知っておけばOKです。

 

物上代位の目的債権が譲渡され、第三者に対する対抗要件が備えられた後に、目的債権を差し押さえて物上代位権を行使することができるか?
↓↓↓
抵当権に基づく物上代位はできる。(登記で公示されているから)
先取特権に基づく物上代位はできない。(登記のような公示方法がないから)

 

物上代位と相殺、どちらが勝つ?

次のケースはちょっと複雑です。
物上代位と相殺がぶつかった場合、どちらが勝つのか?という問題です。

Aは銀行からお金を借りて建物を購入し、建物には銀行の抵当権が設定された。
Aはその建物をBに賃貸した。(※AのBに対する賃料債権-①)
その後、BはAに対してお金を貸した。(※BのAに対する金銭債権-②)
Aが債務不履行を行ったため、銀行はAの賃料債権(①)を差し押さえた。(※銀行はBに対し「Aではなくこちらに賃料を支払え」といえる)
Bは、差押え後に、②を自働債権として①と相殺すると主張した。
Bの相殺は認められるか?

読んでいるだけで複雑ですね。
もうこういうのはイメージで覚えましょう。

これは目的債権(①)をめぐる三角関係です。
①を巡って、物上代位と相殺が争っているわけです。

物上代位は、相殺よりも前から①と知り合いです。(※抵当権設定時)
その場合、物上代位の勝ちとなります。(恋も権利もやっぱり先に繋がっている方が有利ですね)

逆に、②が抵当権設定時よりも前に知り合いだった(成立していた)場合は、差押えされても相殺が勝つことになります。

物上代位による差押えの場合、反対債権が「抵当権設定より前か後か」で判断する

※物上代位ではない差押えと相殺の場合は、「差押え時より前か後か」で判断します。詳しくは「差押えと相殺、どちらが勝つか?」をご覧ください。

 

物上代位と敷金の充当、どちらが勝つ?

これは、上記のケースと似ていますが、少し違います。
それはBの持つ権利の性質です。

Aは銀行からお金を借りて建物を購入し、建物には銀行の抵当権が設定された。
Aはその建物をBに賃貸した。(※AのBに対する賃料債権-①)
その際、BはAに対して敷金を預けた。(※BのAに対する敷金返還請求権-②)
Aが債務不履行を行ったため、銀行は①を差し押さえた。(※銀行はBに対し「Aではなくこちらに賃料を支払え」といえる)
差押え後、契約が終了した際、Bは「賃料の支払いは、②の敷金を充当するので消滅した」と主張することができるか?

これは「敷金」というものの性質が関わってきます。
敷金は、賃貸借契約に付随して未払い賃料などに当然に充当されるものなので、先ほどの相殺とは違って「当事者の意思表示に基づかない」ものです。

よって、この場合は敷金の充当が優先され、物上代位はその残った分にしか及ばないことになります。

先ほどの例でいえば、

①を巡る、物上代位と②の三角関係かと思ったら、実は②は①の婚約者で、結ばれることが当然に決まっていたので、物上代位の出る幕はなかった。

みたいなものですかね。

敷金の充当は、物上代位より優先される

 

物上代位は複雑でややこしいですが、できるだけ簡単に説明したので、じっくり読んでみてください。
(※過去問ではこんな感じで出題されています

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