【改正対応】詐害行為取消権を1ページで分かりやすく解説

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今日のテーマは「詐害行為取消権」(詐害行為取消請求)です。

民法の中でも、けっこうつまづく方が多いところではないでしょうか。

まず、概念自体にあまりなじみがないですよね。
そして要件がたくさんある。
さらに、その要件に例外まである・・とくれば混乱される方も多いと思います。

でも安心してください。
このページでは、複雑な詐害行為取消権を、なるべくシンプルにまとめました。
何度か読んで頂ければ、どういう制度なのかをしっかり理解できると思います。

ちなみに改正により名称が「詐害行為取消請求」となりましたが、ここでは一般的に浸透している「詐害行為取消権」のまま説明を進めます。

 

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そもそも「詐害行為取消権」とは?

「詐害行為」というのは、「債権者を害することを認識しつつ、自己の財産を積極的に減少させる行為」をいいます。

たとえば、

債権者Xにお金を借りていたAがいた。
Aには先祖代々の土地くらいしか財産がなかった。
Aは、このままだとXに土地を差し押さえられてしまうので、それを防ぐためにあえて妹Bに土地を譲渡した

というようなケース。

Aは、土地を譲渡すれば、Xへの支払いができなくなることを知っていたわけです。
その上で、積極的に自分の財産を処分しました。

こうした行為を「詐害行為」といいます。

通謀虚偽表示と似ていますが、詐害行為の場合は取引が有効に成立している点が異なります

債権者Xからしたら、「お前ふざけんなよ!」って感じですよね。
自分の貸したお金が返ってこなくなるわけですから。

そこで、このような行為に対しては、Xは自らの金銭債権を被保全債権として「その譲渡は取り消し!」と、元に戻させることができるようにしたのです。

これを「詐害行為取消権」といいます。

 

要件

詐害行為取消権を行使するには、たくさんの要件があります。
ある人の行為を別の人が取消してしまうわけですから、簡単に認めてしまっては個人の自由が侵害されるからです。

そして、この要件は一つ一つがとても試験問題に出やすいので、ぜひ覚えてください。
(最後に簡単なミニテストを作ったので、それで覚えるといいと思います)

 

  • 裁判上で行うこと
  • 金銭債権または特定物債権であること
  • 詐害行為の結果、債務者が無資力になったこと
  • 被保全債権が、詐害行為の前の原因に基づいて生じたこと(★改正点)
  • 債務者および受益者(転得者)の両方が、債権者を害することを知っていたこと
  • 財産権を目的とする行為であること

 

では一つ一つ見ていきましょう。

裁判上で行うこと

前述の通り、取消権がカンタンに行使できてしまっては個人の自由が侵害されるので、裁判を起こした上で行使してください、となっています。

 

金銭債権または特定物債権であること

被保全債権は「お金」か「特定物債権(不動産などを引渡せという債権)」です。
なぜ特定物の引渡しを請求する債権が含まれるかというと、引渡しできなかった場合は損害賠償請求権に変わるので、結局金銭債権と同じことになるからです。

 

・詐害行為の結果、債務者が無資力になったこと

債務者がもし他の財産を持っていたらそこから回収すればいいので、無資力でなければなりません。

 

・被保全債権が、詐害行為の前の原因に基づいて生じたこと
↑2020年の改正点です

従来は、被保全債権は詐害行為が行われるよりもに存在していることとされていました。
ところが一方で、詐害行為ので発生したその契約に基づく遅延損害金なども、被保全債権として判例で認められていました。

そこで、「詐害行為よりも前の原因」に基づいて生じた債権であれば、詐害行為「後」のものも被保全債権となることが明文化されました。

つまり、遅延損害金の請求権は詐害行為後に発生していますが、詐害行為前の契約に基づくものなので、被保全債権になるということです。

 

・債務者および受益者(転得者)の両方が、債権者を害することを知っていたこと

債権者を害することを知っていたのは、債務者だけではダメで、受益者側も知っていないといけません。
転得者がいた場合は、転得者も悪意でなければなりません。
なお裁判上、受益者が悪意であったことを債権者が立証する必要はないとされています。
受益者側が、「私は善意でした」と立証する必要があります。

 

財産権を目的とする行為であること

財産権とは、経済的利益を対象とする権利です。
財産権でない権利、つまり身分行為(一身専属に属する権利)に関しては取消しの対象となりません。
この身分行為として絶対に覚えておくものに、「相続放棄」「離婚による財産分与」があります。この2つは取消権の対象となりません。
ただし、財産分与については、「財産分与を装って不相応に過大な財産処分を行った場合」は例外的に取消すことができます。

 

誰を相手に訴える?

詐害行為取消権は、裁判において行使するものだということをお話しました。
では、債権者は、誰を相手に訴えを起こせばいいのでしょうか?

債務者?違います。
訴訟の相手方は、「受益者」です!
最初の例でいえば、不動産を譲り受けた「妹B」です。
ここは間違えやすいので注意してくださいね。
ちなみに転得者がいた場合は、転得者のみが相手方となります。

なお、詐害行為を取消した判決の効力は、債務者や、他の債権者全員にも及びます。

↑2020年の改正点です

以前は訴訟の被告ではないので及ばないとされていましたが、そうすると色々矛盾が生じるので、改正によって及ぶことになりました。
そのため、訴訟が提起されると債務者には「訴訟告知」がされるようになっています。

取り消せる範囲は?

取消せる範囲は被保全債権の額までです。
例えば、500万円の贈与を取消す場合、債権額が100万円であれば、100万円までしか取消せません。
ただし、目的物が不可分の取引の場合(不動産など)は、部分的に取消すことができないので、全体を取消せます。

目的物を直接引き渡すよう請求できるか?

無事に取り消しが認められた場合、通常であれば「元の状態に戻す」のですから、受益者は債務者に金銭や特定物を返還することになります。
では、債権者が、直接自分に引き渡すよう請求することはできるでしょうか?

答えは、

「金銭」「動産」はできる
「不動産」はできない

です。

金銭や動産は、直接自分に引渡せと請求できます。
債務者が受け取ってもすぐに債権者に渡すことになるので、だったら直接受け取った方が早い、という話です。
そもそも債務者が受取りを拒否することも考えられますので。

一方で、不動産はできません。
不動産の詐害行為とは譲渡(所有権の移転)ですから、その移転登記を抹消したら元の債務者名義に戻るだけだからです。

 

相当の対価を得ていた場合も詐害行為となるか?

例のように、債務者Aが不動産を妹Bに譲渡した場合において、もしAが相当の対価を得ていたらどうでしょうか。
つまり、安く売ったわけじゃなく、それなりの金額で売った場合にも詐害行為取消請求をすることができるでしょうか。

その場合には

・お金に換えることで、Aが財産を隠匿するおそれがあり
・Aにその意思があり
・Bもそれを知っていれば

詐害行為取消権が認められます。

 

ミニテストで覚えよう!

試験で狙われそうな部分をミニテスト形式にしてみました。
ここで知識が身についているか、総チェックしてみてください。
(※以下で「受益者」と書いているものは、すべて「受益者&転得者」のことです。いちいち書くと読みにくいので、「受益者」のみとしました)

 

債権者取消権は、債務者を相手に訴えることができるか?

 

できない。
訴える相手は受益者

 

 

債務者には他にも財産がある。この状況で詐害行為取消権を行使できるか?

 

できない。
債務者が無資力であることが要件。

 

 

受益者に対し、直接金銭を自己に引き渡すよう請求できるか?

 

できる。
金銭債権は直接OK。ただし被保全債権額が上限。

 

 

受益者に対し、不動産を直接自己に引き渡すよう請求できるか?

 

できない。
不動産は登記を債務者に戻すように請求できるのみ。

 

 

被保全債権が発生したのは詐害行為が行われた後であったが、それは詐害行為よりも前の原因に基づくものであった。この状況で権利を行使できるか?

 

できる。
被保全債権は、詐害行為の前の原因に基づいて生じていればよい。

 

 

判決の効力は、債務者にも及ぶか?

 

及ぶ。
債務者は被告ではないが、効力が及ぶ。
そのため、訴訟が提起されると債務者には「訴訟告知」が行われる。

 

 

債務者は債権者を害することを知っていたが、受益者は知らなかった場合、詐害行為取消権を行使できるか。

 

できない。
債務者と受益者のいずれも知っていたことが必要。
受益者は自ら「善意」であったことを立証する責任がある。

 

 

不動産の二重譲渡における第一の買主は、第二の買主に対して詐害行為取消権を行使できるか?

 

原則できない。
ただし、債務者が無資力となった場合はできる。

 

 

債務者が相続放棄をした場合、詐害行為取消権を行使することはできるか?

 

できない。
相続放棄は身分行為であり、対象とならない。

 

 

債務者が遺産分割協議で、法定相続分を下回る内容で合意した場合、詐害行為取消権を行使できるか?

 

できる。
遺産分割協議は取消権の対象。

 

 

離婚による財産分与は、原則として詐害行為取消権の対象とならないが、例外的にできる場合がある。それはどのような場合か。「~と認められるような特段の事情がある場合」に続くように答えよ。

 

「不相応に過大で、財産分与に仮託してなされた財産処分である」と認められるような特段の事情がある場合

 

(↑この文言は、そのまま書けるようになっておいてください)

 

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