今回のテーマは、「遺言と遺産分割協議の関係」です。
被相続人(死亡した人)が、遺言書を残していることってありますよね。
そのときに、
と相続人らが思ったとき、可能なのか?
という点についてお話していきたいと思います。
相続分を指定する遺言だった場合
Aが死亡し、相続人は、配偶者B、及び、子のCとDだったとします。
この場合、法定相続分は、
B:1/2
C:1/4
D:1/4
となります。
でも、Aが残した遺言が以下の通りだったとしましょう。
B:1/3
C:1/3
D:1/3
キッチリ三等分。
争いがないように、公平にしたいという思いからそうしたのかもしれません。
このように、遺言によって、共同相続人の相続分を法定相続分と異なった割合に定めることは、民法902条で認められています。
でも、相続人であるBCDとしては、それとは違う形で分けたいと思うこともあります。
例えば、Bはもう高齢でそれほど多くの遺産は必要としていないので、その分をまだ若いDに多く譲ってあげたいといった場合など。
そこで、BCDによる遺産分割協議で、
B:1/4
C:1/4
D:1/2
とする、といったことが可能です。
つまり、遺言で相続分が指定されていても、遺産分割協議でそれと異なる相続分にすることはできるわけです。
相続させる旨の遺言(特定財産承継遺言)だった場合
一方で、遺言には、上記のように割合ではなく、特定の財産を特定の相続人に「相続させる」という場合があります。
例えば、
土地はBに相続させる
といったような遺言ですね。
こういった遺言を、「特定財産承継遺言」といいます。
この場合、遺産分割協議で、「いや、土地はCに相続させてあげよう」といったように変えることはできるでしょうか。
原則からいうと、できないとされています。
ん?なんか含みがある表現ですね。理由を説明します。
このような特定財産承継遺言の場合、Aが死亡した瞬間に、遺産分割手続を経ることなく土地はBのものになります(最判平3.4.19)。
つまり、もし、土地をCのものにしたいのであれば、一旦Bに相続登記を行い、その後にCに所有権移転登記を行うという手続きを踏まなければならないとされているのです(登記研究546号)。
特定財産承継遺言は、遺産分割方法を指定したものとされるので、相続人たちはこれに拘束されることになるんですね。
よって、理屈上、これと異なる遺産分割協議をすることはできないことになります。(※遺留分侵害額の請求はできます)
とはいえです。
遺言は相続人間で無用な争いを避けるために行われるものですから、全相続人の意思が一致しているなら、遺言とは異なる遺産分割を行ってもよさそうなものですよね?
ということで、実は、それを可能とする地裁判決も出ているのです(さいたま地判平14.2.7)。
そして実務上も同様の扱いとなっています。
故人の遺言よりも当事者の意思の方が尊重されるべきだし、それで問題はない、ということですね。
つまり、
ということなのです。
ちょっとややこしいですね。
よって、特定財産承継遺言の場合は、遺産分割協議との関係が試験で問われることは考えづらいんですね。
自分で今回のテーマを決めておきながらアレですけど。
もし出題されるとすれば、
という知識ですね。
これは最高裁判例から明らかなので、こちらを覚えておきましょう。
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