相続に関する問題の中で、たまに出てくるのが「共同相続」と「遺産分割」の後に出てきた第三者との関係です。
「第三者に対抗するには登記が必要か否か?」について、混乱を生じている人も多いのではないでしょうか。
例えば以下のような問題です。
【例題1】
Aが死亡し、相続人BとCがA所有の土地を共同相続した。
しかしBがCに断りなく土地の全体を自分名義にして、勝手にDに売却し、登記を移転してしまった。
この場合CはDに自己の持分を登記なくして対抗できるか?
【例題2】
Aが死亡し、相続人BとCがA所有の土地を共同相続した。
その後の遺産分割協議により、Cが土地を単独相続することになったが、
BがCに断りなく自己の持分であった部分を勝手にDに売却し、登記を移転してしまった。
この場合CはDに登記なくして対抗できるか?
問題文だけを見るとややこしいですね。
しかし、実はこのテの問題は、たった2つのことさえ覚えればすごく簡単に解けるのです。
●「共同相続」時点では、登記なしで対抗可能
●「遺産分割」後は、登記が必要
なぜかというと、
「共同相続」というのは、被相続人の死亡によって「法律上」「当然に」効力が生じます。
つまり、土地の所有権は即、相続人に移るのです。
よって、それを無視して勝手に登記を移転しても無権利の行為ですから、登記なしで対抗できます。
これに対し「遺産分割」というのはあくまで当事者間の取り決めですから、
第三者にとっては関係がありません。
よって、対抗するには登記が必要になります。
【例題1】の場合、
Bは「Cの持分」については無権利者ですから、Dも土地に関しては無権利のままです。
よって、Cは登記なくしてDに対抗できます。
【例題2】の場合、
遺産分割協議により、Bの持分はCに移転しています。
つまり、CがこのBの持分を第三者に対抗するには、登記を備えていなければなりません。
よって、登記なしではDに対抗できません。
(Bが、CとDに二重譲渡した、という考え方もできます。二重譲渡の対抗要件は登記ですよね)
覚えておきましょう。
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