相殺ができない場合

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民法において、相殺が可能かどうかはよく問われるテーマの一つです。

今回はその中でも、「自働債権として」または「受働債権として」相殺が可能か否か?という点でお話をしたいと思います。

 

まずは用語のおさらいをしましょう。

「自働債権」とは、「相殺します」と言う側が持っている債権です。
「受働債権」とは、「相殺します」と言われる側が持っている債権です。

 

自分と相手がいるとして、自分が相殺をしたいとします。
自分が持っている債権が自働債権です。
相手が持っている債権が受働債権です。

 

さて、ここで問題です。

 

【問題①】
ある債権は、「自働債権」として相殺ができません。
その債権を2つ挙げてください。

※相殺禁止特約は考えないものとします。

 

【解答】

  • 同時履行の抗弁権が付着している債権
  • 差押えされた債権

の2つ

 

同時履行の抗弁権が付着している債権とは具体的にどういうものか?というと、物の売買契約(双務契約)をイメージしてみてください。
自分が物を所有していて、相手へ売るという売買契約が成立したとします。
(「物の引渡し」と「支払い」は同時履行の関係です)
すると、自分は「相手に代金を請求する債権」(※自働債権)を取得しますが、併せて「物を引渡す債務」も負います。
これが、同時履行の抗弁権が付着した債権です。

 

もしこの場合に自分から相殺ができてしまうと、自分は「物を引渡す債務」を果たしていないのに、双務契約が完了してしまうことになります。
そうすると、相手方は「物を確実に取得できない」という不利益を被ってしまいます。
だから、同時履行の抗弁権が付着している債権は、自働債権として相殺することができないのです。

 

また、「自働債権が差押えられている」場合は、自分で処分することができなくなっているため、相殺を主張することはできません。
(相手方から相殺することは可能です。つまり「受働債権」としての相殺はOK)

 

では次の問題です。

【問題②】
ある債権は、「受働債権」として相殺ができません。
その債権を2つ挙げてください。

※相殺禁止特約は考えないものとします。

 

【解答】

  • 不法行為によって発生した債権
  • 差押えの禁止された債権

の2つ

 

受働債権として相殺ができないということは、自分が「相殺する!」と主張しても、相手が自分に対して上記の2種の債権を取得している場合には、相殺は認められないということです。

 

なぜ不法行為によって発生した債権を受働債権として相殺できないかといいますと、
例えばこんなケースをイメージしてみてください。

 

あなたは相手にお金を貸していましたが、相手はお金を返してくれません。
そこで、あなたは怒りにまかせて相手をボコボコにしました。
すると相手は、あなたに対して、不法行為によって生じた損害賠償請求権を取得します。

ここであなたが、「俺の貸したお金とチャラ(相殺)でいいだろ」と主張できてしまうと、借金をめぐって暴力事件を誘発してしまう可能性があるわけです。それは好ましくないですよね。

また、不法行為によって生じた債権については、被害者救済のために、現実に給付を受けさせることも必要です。

そのため、不法行為によって生じた債権を受働債権として相殺することはできなくなっているのです。

 

また、「差押えの禁止された債権」についても、上記と同様の考え方です。
差押えの禁止された債権とは、具体的にいうと
・年金
・生活保護費
・労働者の給与債権
・扶養請求権
などです。

こうした債権は、債権者の生活を維持するために重要なものですから、現実に給付を受けさせてあげなければいけません。
よって、相殺によって消滅させることができないのです。

 

 

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試験では「自働債権」と「受働債権」を入れ替えたヒッカケ問題がたびたび見受けられます。
ぜひ正確に覚えておきましょう。

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