「債権譲渡」の対抗要件で覚えておくべきこと

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今回のテーマは「債権譲渡」の対抗要件です。

一部にややこしいところもありますが、分かってしまえば意外とシンプルです。
頑張って覚えましょう。

 

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対抗要件は2つ

債権譲渡自体は、 実は債権の譲渡人と譲受人が合意しさえすれば成立します。
債務者の承諾は不要です。

しかし、ある日突然、知らない人から「お金払ってください」と言われても債務者は困ってしまいますよね。「あなた誰ですか?払えませんよ」と言うに決まっています。

そこで、債権譲渡の効果を債務者に対しても主張するには

譲渡人から債務者への通知
もしくは
●債務者の承諾

のいずれかが必要となっています。
これを「債務者への対抗要件」といいます。

 

また、債権は二重に譲渡されることもあります。
そうすると「どちらの譲受人の方が優越するのか?」という問題が生じます。
そこで出てくるのが「債務者以外の第三者への対抗要件」です。
これは

譲渡人から債務者への「確定日付のある証書」による通知
もしくは
●債務者の「確定日付のある証書」による承諾

によって決まります。
(「確定日付のある証書」とは、主に内容証明郵便ですね)

債権譲渡でよく出題されるのはまさにこの部分です。
しっかり掘り下げていきましょう。

 

こんな場合はどちらが勝つのか

例によってキャラクターで例えた方がイメージしやすいと思うので、以下のように配役しておきましょう。

譲渡人:サザエ
譲受人1:カツオ
譲受人2:ワカメ
債務者:ノリスケ

サザエがノリスケに対して持っている債権を、カツオとワカメに二重譲渡したという設定です。

 

ケース① 確定日付ある証書が一方だけだった場合

サザエは、カツオとワカメに債権を二重譲渡しました。
そしてサザエはノリスケに対し
・「カツオに譲渡したよ」と単に通知をし、
・「ワカメに譲渡したよ」と確定日付のある証書で通知をした。
この場合、カツオとワカメはどちらが譲受人となれるか?

答え:ワカメ
対抗要件を備えているのはワカメの方だけだから

 

ケース② 両方とも確定日付ある証書で通知された場合

二重譲渡が行われた後、サザエはノリスケに対し
・「カツオに譲渡したよ」と確定日付のある証書で通知をし、
・「ワカメに譲渡したよ」と確定日付のある証書で通知をした。
この場合、カツオとワカメはどちらが譲受人となれるか?

答え:先に通知が「到達した」方

いずれも対抗要件を備えた場合は、先にノリスケのところに到達した通知の方が勝ちます。
一つ注意しなければいけないのが、「証書の日付は関係ない」という点です。

例えば
「カツオに譲渡したよ」という通知の日付が10/1で、届いたのが10/4
「ワカメに譲渡したよ」という通知の日付が10/2で、届いたのが10/3
であれば、ワカメの勝ちです。
あくまで到達日が早い方が勝つのです。

 

ケース③ 両方とも確定日付ある証書で、同時に到達した場合

二重譲渡が行われた後、サザエはノリスケに対し
・「カツオに譲渡したよ」と確定日付のある証書で通知をし、
・「ワカメに譲渡したよ」と確定日付のある証書で通知をし、
かつ、その通知が同時にノリスケのもとに到達した場合、カツオとワカメはどちらが譲受人となれるか?

答え:どちらもなれる

少し意外ですが、この場合はカツオもワカメもノリスケに対し、「自分が譲受人だ」と主張できることになります。
といっても、ノリスケは2回弁済しなければいけないわけではなく、どちらか一方に弁済するか、「どちらに払えばいいのか分からないから」という理由で供託すれば債務は消滅します。
供託された場合は、カツオとワカメは対等な債権者ということになり、供託金を50%ずつ分けることになります。

 

通知を「代理」もしくは「代位」できるか?という問題

さて、二重譲渡の件はひとまずここまでにして、原点に戻り、「債務者への対抗要件」をもう一度みてみましょう。

債務者への対抗要件の一つは、「譲渡人から債務者への通知」でした。

さて、この「通知」を、譲受人が「代理」したり、「代位」してすることはできるのでしょうか?
再び以下の配役で考えてみましょう。

譲渡人:サザエ
譲受人:カツオ
債務者:ノリスケ

 

代理はできる

債権が譲渡された場合、本来であればサザエがノリスケに通知します。
しかしサザエが面倒くさがりでなかなか通知しないので、カツオは困っています。

カツオ「姉さん、僕が代理して通知するよ!」
サザエ「じゃあよろしく」

これは認められるでしょうか?

答え:認められる

代理することは構いません。サザエの意思で通知したのと同じことだからです。

 

代位はできない

今度は、サザエがなかなか通知しないので、

カツオ「よし、債権者代位権を使って、僕が姉さんに代わって通知しよう」

これは認められるでしょうか?

答え:認められない

代位の場合は、サザエが知らないうちに勝手に通知されるわけです。それではサザエの意思で通知したとはいえませんから、この通知に対抗要件は認められません。

 

 

2017年の記述問題で問われた内容は、今回は省略します。
各自で見ておいてくださいね。

民法
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コメント

  1. なみ より:

    お疲れさまです!
    すみません質問させてください(ToT)
    請負契約の、隠れた瑕疵に限られないというところと、売買契約の隠れた瑕疵のみが対象というのがうまく理解ができません(^o^;)

    売買契約は、瑕疵が隠れてなかったらそもそも契約しないからってことかな?って軽く流してたけど、いまさらになってなんかごちゃごちゃしてきて?

    そこがごちゃごちゃしてるせいか、瑕疵担保責任のところがあやふやというか、いまいち理解しきれていません(^_^;)

    お時間ありましたら、ポイントまとめ記事お願いできないでしょうか?(^^;)

    いけそうだったらで大丈夫です!?

  2. なみ より:

    すみませんもうひとつ質問させてください?
    履行期と弁済期って、意味は違いますか??なにか使い分けのポイント?みたいなのってありますか(^^;)?

    • gyoseishoshi より:

      こんにちは!
      ちょっと時間がないので、コメントでご回答しますね。
      (あとでもしかしたら記事にするかもですが)

      請負が「隠れた瑕疵に限られない」というのは、そもそも請負というのは「依頼した通りに作ってね」という契約なので、隠れているかどうかに限らず、瑕疵があること自体がダメだからです。
      売買の場合は、見て分かる瑕疵なら、それを承知の上で取引しているので、担保責任が発生するのは隠れた瑕疵に限られるということです。

      あと、履行期と弁済期は同じ意味です。

  3. なみ より:

    時間がない中、ありがとうございます!
    お忙しいのを承知なのに本当に本当に申し訳ないのですが、もうひとつだけ質問させてください(ToT)

    試験対策の講義動画の中で、利害関係を有する者と正当な利益を有する者の違いを確認しておいてください!
    と言われたのですが、違いが分かりません。。
    教えていただけるとありがたいです?。。。