「時効」の重要ポイントまとめ

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今回のテーマは「時効」です。

民法上の「時効」とは、一定の年数が経過することにより、現在の事実状態に合わせて権利・法的関係が成立することをいいます。

種類は
・特定の年数が経過することにより権利を得られる「取得時効」
・特定の年数が経過することにより権利が消滅する「消滅時効」
の2つがあります。

基本的な知識から細かい知識まで幅広く問われることが予想されますので、ちょっとボリュームは多いですがしっかり押さえておきましょう。

 

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取得時効のポイント

要件

取得時効の要件は、

所有の意思をもって(自主占有)
平穏・公然と占有し
占有開始時に善意無過失であれば10年、悪意または有過失であれば20年

となっています。

ここではまず、「所有の意思をもって占有」という部分を押さえておいてください。
自らが所有者だという認識で占有しているということです。

例えば、賃貸物件に住んでいる人は、あくまで借りているだけですから所有の意思をもっていません。(他主占有)
よって賃借人は、どれだけ長く住んでも時効取得することはありません。

ただし、賃借人から相続し、新権限によって所有の意思を持って占有した場合は、時効取得が可能です。

 

承継の場合に必要な年数

さて、取得時効においては、「承継」も大事なポイントです。
例えば最初にAが占有を開始したが、その後にBが承継した、といった場合です。

時効取得は、善意の場合と悪意の場合で成立までに必要な年数が違います。
では承継の場合はどのように考える必要があるでしょうか。

一般的な以下のケースで見ていきましょう。

①Aが善意で、Bも善意だった場合
②Aが善意で、Bが悪意だった場合
③Aが悪意で、Bが善意だった場合
④Aが悪意で、Bも悪意だった場合

なんか複雑と思いますでしょうか?
安心してください。実はこんなに覚える必要はありません。

なぜなら、大事なのはAのみだからです。

時効取得における「善意」「悪意」は、最初に占有を始めたAのみで判定します。

よって、

①Aが善意で、Bも善意だった場合 → 10年
②Aが善意で、Bが悪意だった場合 → 10年
③Aが悪意で、Bが善意だった場合 → 20年
④Aが悪意で、Bも悪意だった場合 → 20年

となります。

さらにいえば、Aの善意か悪意かの判定は「占有開始時」です。
例えばAが善意で占有を始めて、その後に事実を知って悪意になったとしても、10年のままです。

これを踏まえて、以下について考えてみましょう。

前主が善意無過失で7年占有し、承継した者が悪意で3年占有した場合、取得時効は成立するか。

→成立する。前主が善意無過失なので、必要な期間は10年。

前主が悪意で6年占有し、承継した者が善意で10年占有した場合、取得時効は成立するか。

→これはヒッカケ問題です。気を付けてください。正解は「成立する」です。
前主の占有と併せた場合は20年必要となりますが、この場合は併せず、善意の10年だけで取得することができます。(どちらを選ぶかは自由に決められます)

 

いつから権利を取得するか?

さて、晴れて時効が成立した場合、取得者はいつからその所有権を得るのでしょうか?

答えは「占有開始時」です。

なんとなく、時効が成立した時からと思ってしまうのですが、ここは注意してください。
時効取得には遡及効というものがあり、占有した時に遡って権利を取得するのです。

例えばAが20年前から悪意で占有開始をした場合、時効取得が成立すれば、Aは20年前から所有権を得ていたものとされます。

そのため、時効が成立する前にその占有物から果実が生じていた場合でも、時効取得した者に権利があることになります。

 

時効完成前と、完成後の「第三者」との関係

時効取得において、第三者との関係も押さえておきたいポイントです。

時効完成に、真の所有者が土地を第三者に譲渡したとしても、占有者は登記なしで第三者に対抗することができます。「譲渡していた?そんなの関係ねぇ!」なんです。

 

なぜかといえば、そもそも時効完成前に占有者が登記を備えることはできないので、登記が対抗要件になることはないからです。
また、占有者にとっては、要件を満たしさえすれば登記がなくても権利を主張できるので、真の所有者が誰であれ、結果は同じということでもあります。
よって、第三者が登記を備えていたとしても、占有者は対抗できます。

 

一方で、時効完成に、真の所有者が土地を第三者に譲渡した場合は、登記が対抗要件となります。
なぜかといえば、時効完成によって所有権は占有者に移りますが、真の所有者が第三者にも譲渡することによって、あたかも不動産の二重譲渡が起こったかのようになるからです。

 

よって、登記を先に備えた方が権利を取得することになります。

ちなみに、もし第三者に先に登記を備えられても、占有者がその時点からさらに20年間占有を続ければ、改めて時効取得することができます。

 

消滅時効のポイント

消滅時効に関しては、「起算点」が最も重要なポイントとなります。
つまり、いつの時点から時効がカウントされるか?ということです。

これは債権の種類によって異なりますので、理屈も含めて覚えておいてください。
重要なのは以下の5つです。

「確定期限のある債権」の場合

確定期限とは、到来する期日が確定している期限のことをいいます。
例えば、2018年11月11日といった日付です。
起算点は当然「期限到来時」となります。

「不確定期限のある債権」の場合

不確定期限とは、「到来することは確実だが、いつ到来するか分からない期限」をいいます。
例えば、「父が死んだら」といった場合などです。
実はこの場合も「期限到来時」が起算点です。「知ったとき」ではないことに注意してください。
よって、父が死んだことを知らなかったとしても、父の死亡時から進行します。

「期限の定めのない債権」の場合

「期限の定めのない」とは、期限そのものを決めていないことをいいます。
この場合は、原則として「債権成立時」が起算点となります。
期限の定めがない場合は、債権者は契約成立時から債権を行使することができるので、その瞬間から時効がスタートするのです。

ただし、例外として「金銭債権」だけは「債権成立時から相当期間経過後」となります。
これは覚えておいてください。
なぜかといえば、いきなりお金を返せと言っても、債務者が今すぐ用意することは難しいからです。
よって、相当期間の経過が必要とされています。

「債務不履行による損害賠償請求権」の場合

例えば、AがBから家を購入する契約を締結したものの、Bが引渡し前に過失で家を焼失させたとします。
この場合、AがBに対して損害賠償を請求することができますが、その権利はいつから消滅時効がスタートするでしょうか。
これは「本来の債務の履行を請求できる時」となります。(この場合は、売買契約成立時)

なぜかといえば、その損害賠償請求権は、本来は家の引渡債権が変化したものなので、法的に同一のものと扱われるからです。

「損賠賠償請求権」という言葉につられて、損害が発生した時(Bが家を焼失させて履行不能になった時)と思ってしまいがちですが、間違えないように注意してください。

「債務不履行による契約解除に基づく原状回復請求権」の場合

同じように債務不履行のケースですが、こちらは契約を解除したことによる原状回復請求権の場合です。
原状回復とは、契約前の状態に戻すことを意味します。
この権利は、契約を解除したことによって発生する権利ですから、「契約解除時」が起算点となります。

 

時効に関しては、その他も細かい知識がありますので、「援用編」「放棄・更新編」も見ておいてください。

民法
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