今回のテーマは「旭川学力テスト事件」です。
国家が教育に介入することは違憲となるかどうかが争われた事例です。(最判昭51.5.21)
事件の概要
1961年、文部省が全国の中学2・3年生を対象として一斉学力テストを実施した。
市立中学の教師であるAは、実力でこれを阻止しようと校長を暴行したため、公務執行妨害等で逮捕された。
Aは「学力テストは義務教育に対する国の不当な支配なので違憲。公務執行妨害は成立しない」として反論した。
争点
・子供の教育を決定する権限は誰にあるのか?
・普通教育の教師に「教授の自由」は認められるのか?
押さえておくべきポイント
- 教育権の帰属には、国家に帰属する説と、親や教師をはじめとした国民に帰属する説があるが、いずれも全面的に採用はできない。
- つまり、国民にも帰属するし、国家も必要かつ相当と認められる範囲で、教育内容を決定する権能を有する。(折衷説)
- 普通教育における教師の教授の自由は一定範囲において保障されるが、完全な教授の自由は認められない。
よって、学力テストは合憲であるとして、公務執行妨害が成立しました。
この「教授の自由」というのは、憲法23条の「学問の自由」から導きだされるものですが、これがまるっと保障されるのは大学だけです。
普通教育では「一定範囲のみ」しか保障されない、というのが今回の判例です。
大学は学問の研究発表の場なので、自由に教えることもできなければなりませんが、普通教育は児童の知識と能力の育成が目的となります。
もし「何を教えても自由だー」とばかりに偏った教え方をする教師がいれば、児童の人格形成に悪影響を及ぼしかねません。
公立学校は学区も決まっていますし、教師を選ぶこともできません。生徒の側に自由がないのです。
こうした点を考慮して、普通教育においては、教師に完全な教授の自由を認めることはできないということになりました。
この違いは押さえておきましょう。
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