今回のテーマは「森林法共有林事件」です。
共有林の分割について制限を課している森林法の規定が、憲法29条に違反しないかが焦点となった事例です。
事件の概要
山林を、2分の1ずつの持ち分で共有していた兄弟がいたが、信頼関係が崩れたため、弟が兄に山林の分割を求めた。
しかし森林法の規定では、「過半数」の持ち分を持つ者でなければ山林の分割を認めていなかった。
弟は、分割を認めない森林法の規定は憲法29条の財産権の侵害に当たるとして訴えた。
押さえておくべきポイント
●森林法の立法目的は「森林の細分化を防ぎ、生産力を増やすことで経済発展を図るもの」であり、公共の福祉に合致しなくはない。
●しかし、持分価額2分の1以下の共有者の分割だけを許さないことに必要性は見いだせない。
●目的に対し、手段の合理性も必要性も肯定できないので、違憲である。
数少ない違憲判決の一つですね。
とはいえ、本判決は最高裁の判断としてはイマイチ不明瞭なものでした。
「経済的自由」に対する違憲審査基準は「積極目的」と「消極目的」に分かれます。
森林法の規定は「経済の発展」を目的としているため「積極目的」に該当して「明白性の基準」が使われそうに思うのですが、今回は「消極目的」の「厳格な合理性の基準」が使われたようにも見えます。
ということで、本判決で細かい論点が問われる可能性は少ないと思いますので、「立法目的は〇だが、手段は×なので違憲となった」と覚えておけば大丈夫でしょう。
違憲審査基準を1つの図にまとめてみました
違憲審査基準って、小難しい言葉がたくさんあって混乱しがちですよね。
「厳格な合理性の基準」とか「明白性の基準」とか。
あと、「二重の基準」と「目的二分論」とか似ている言葉があったり。
ちょっと分かりづらいと思ったので、図にして...
ちなみに、「過半数」と「2分の1」の違いに注意しましょう。
過半数は、半分を超える数です。
2分の1ちょうどでは過半数となりません。
たとえば100の過半数は、51以上です。
50では過半数になりません。
だから持分が2分の1ずつだった本件では、弟だけで分割できなかったのですね。
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