目黒事件と世田谷事件 公務員の政治的行為が処罰される基準は?

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今回のテーマは、「公務員の政治的行為」についてです。

公務員の政治的行為が禁止されていることの合憲性については、以前ご紹介した「猿払事件」でやりましたよね。(今回の内容にも関わってきますので、チェックしておいてくださいね)

それから時を経て、「どういった行為が処罰対象となる政治的行為に当たるのか?」について2つの判例が出ました。
それが今回ご紹介する「目黒事件」「世田谷事件」です。

どちらも公務員のした行動が政治的行為に当たるとして、国家公務員法違反で起訴されたものですが、事案の内容が非常に似ており、同じ日に判決が下されたにもかかわらず、一方は無罪で他方は有罪となりました。

ということで、「え?なんで?」と混乱される方もいるかもしれませんので解説しておきたいと思います。

 

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目黒事件の概要

目黒社会保険事務所の職員Aが、勤務時間外に、日本共産党の機関紙「しんぶん赤旗」を配ったことが「公務員の政治的行為」に当たるとして起訴された。しかし無罪となった。

世田谷事件の概要

厚生労働省の課長補佐Bが、勤務時間外に、日本共産党の機関紙「しんぶん赤旗」を配ったことが「公務員の政治的行為」に当たるとして起訴された。そして有罪となった。

 

パッと見るとほぼ同じような案件ですが、大きく違うところが一つあります。
それは被告人の立場です。

目黒事件のAは単なる一職員に過ぎませんが、世田谷事件のBは課長補佐(=管理職)です。

これが有罪か無罪かを分けることになりました。
つまり、「管理職」である場合には、公務員の政治的中立性を損なうおそれが大きいとされたわけですね。

 

ちょっと待ってよ。

「猿払事件」では「非管理職でも公務員の政治的行為は禁止」と判示されてるじゃないか?

 

と思われた方。大正解です。

管理職じゃなくても、公務員が政治的行為をすることは禁止されています。

 

ではなぜ目黒事件は無罪となったのか?

それは、目黒事件のA氏の行動は、「公務員の職務の遂行の政治的中立性を損なうおそれが実質的に認められない」とされたからなんです。

この「実質的に」というのがポイントです。

判決はこのように述べています。

 

国家公務員法第102条第1項の「政治的行為」とは、公務員の職務の遂行の政治的中立性を損なうおそれが、観念的なものにとどまらず、現実的に起こり得るものとして実質的に認められる政治的行為をいう。

 

つまり、公務員が政治的行為をしたとしてもその全てが処罰されるわけではなく、「実質的に中立性を損なうおそれのあるもの」のみが対象になるということですね。

 

目黒事件の場合、

①管理職的地位にないAが
②職務と全く無関係に
③公務員により組織される団体としての性格を有さず
④公務員による行為と認識されることもない状態で行った行為

であるため、「実質的に中立性を損なうおそれはない」として無罪となったのです。

しかしながら世田谷事件の方は、②~④までは共通していましたが、Bが「管理職的地位にある」ということで、「実質的に中立性を損なうおそれあり」として有罪となりました。

管理職は他の多くの職員に影響を及ぼす可能性があるから、たとえ②~④のような状態であってもダメというわけですね。

 

押さえておくべきポイント

●政治的行為は、勤務時間外でも、非管理職であっても禁止である。

●しかし、処罰対象となる政治的行為とは、公務員の職務の遂行の政治的中立性を損なうおそれが、観念的なものにとどまらず、現実的に起こり得るものとして実質的に認められる政治的行為をいう。

●職務と全く無関係に、公務員により組織される団体としての性格を有さず、公務員による行為と認識されることもなく行われた行為は、非管理職であれば実質的に政治的中立性を損なうおそれはない。しかし管理職であれば損なうおそれがある。

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