今回のテーマは「小売市場距離制限事件」です。
小売市場の開設に距離制限が設けられていることが憲法違反となるかが争われた事例です。(最判昭47.11.22)
事件の概要
小売市場の開設は法律により許可制が採られており、その許可の条件として距離制限が設けられているが、Xは無許可で制限区域内に小売市場を開設したため、起訴された。
Xは「許可制および距離制限は、憲法第22条第1項に違反する」として反論した。
憲法22条1項
何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。
何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。
押さえておくべきポイント
- 社会経済に対する法的措置は立法府の裁量に任されており、裁判所が違憲判断をするのは立法府が裁量権を逸脱し、規制が著しく不合理であることが明白な場合に限られる。(明白性の原則)
- 許可制および距離制限は中小企業保護のためであって一応の合理性があり、その規制も著しく不合理であることが明白とは言えないので合憲である。
「経済的自由」に対する規制には
- 消極目的規制
- 積極目的規制
の2つがあります。
消極目的規制とは、「国民の生命の安全」のために行われる規制です。「消極」という言葉には、必要最小限に留めるという意味が込められています。
この場合の規制は、「厳格な合理性の基準」で審査されることとなります。これは「薬局距離制限事件」で用いられました。詳しくは↑のリンク先をご覧ください。
一方、積極目的規制とは、「社会経済の発展」や「福祉国家の実現」などのために行われる規制です。
経済活動を無制限に許すと秩序が害されますし、社会的弱者は保護しなくてはなりませんから、積極的な規制を加えることが必要とされます。
この場合の規制は、「明白性の原則」で審査されることとなります。
つまり、規制が著しく不合理であることが明白である場合にのみ違憲となる、ということです。
今回の判例はこの基準が用いられました。
このように、目的によって違憲審査基準を使い分けることを「目的二分論」といいます。
違憲審査基準の図も見ておいてください。
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