今回のテーマは「危険負担」です。
民法改正で大きく変わった部分ですので、内容をリニューアルしてお届けします。
危険負担とは何か?
まず「危険負担」とは何かといいますと
買主と売主のどちらも悪くないのに、目的が達成できなくなった場合に、どちらが損を被るか
の規定のことをいいます。
例えば、中古車の売買のケースで考えてみましょう。
売買契約を先に済ませて、引渡しは後日としていた場合において、引渡し前に車庫が隣家の火事の延焼で焼けてしまったとします。
延焼による火事は、買主(債権者)にも売主(債務者)にも責任はありません。
しかし、売主は引渡しができなくなってしまいました。
こうしたときに、どちらがその危険を負担するか(=損を被るか)を決めるのが危険負担です
結論として、この場合に損するのは
となります。
買主は契約を解除することができるので、売主は車を失った上、お金も請求できなません。
これを「債務者主義」といいます。
以前は、特定物の売買の場合、買主はお金を支払わないといけないことになっていました。
しかしこれは不合理な規定だとして債務者主義に変更されました。
ちなみに、「債権者」「債務者」という用語で混乱される方もいますが、これは物(ブツ)を基準として考えます。
「物を引き渡せ」という権利を持っているのが債権者(買主)
「物を引き渡す」義務を負っているのが債務者(売主)
ということですね。
不特定物の場合は?
先ほどの例は「特定物」の場合でした。
(特定物とは、物の個性に着目して取引した物を指します。つまり一点モノです。中古品も特定物になります)
では、「不特定物」の場合はどうでしょうか。
不特定物とは、物の個性を問わずに取引した物をいいます。「替えのきくもの」「量産品」ですね。
実はこれも同様に売主が負担することになります。
債務者主義です。
もし取引の目的物が新車だった場合、替えを用意することはできるので、売主は他の新車を調達する義務が発生します。(これを「調達義務」といいます)
つまり、
ということですね。
改正によって非常にシンプルになりました。
なお、不特定物については、以下の知識もついでに覚えておきましょう。
不特定物が特定される場合とは?
不特定物は、替えがきく物ではありますが、ある一定の行為が行われた場合は、物が「特定」されて、特定物の扱いとなります。
それはどのような場合かというと
- 債務者が物の給付をするのに必要な行為を完了したとき または
- 債権者の同意を得てその給付すべき物を指定したとき
です。
新車の例でいえば、「納車」が「必要な行為を完了したとき」に当たります。
また、ディーラーが「この車でよろしいですか」といって、買主が「うん、これでいいです」と返事したら「給付すべき物を指定したとき」となります。
これらの行為が行われたら、その時点で特定物となります。
(以下の記述問題も解いておいてください)
売主が負う義務について
上記の「不特定物が特定された場合」について、最後にもう一つだけ知識を追加しておきましょう。
それは売主が負う義務についてです。
不特定物のときと、特定物になったときで、売主が負う義務が変わるのです。
不特定物であるうちは、先ほどもお伝えしたとおり、売主には「調達義務」があります。
何かあったら別の物を用意する義務です。
一方、特定物となった場合は、それを買主に引き渡すまで売主は「善管注意義務」を負います。
特定が行われた時点でもう買主の物なんだから、大切に管理する必要があるということですね。
特定物になった段階で負う義務は「善管注意義務」です。
コメント
早速のまとめ記事ありがとうございます!!とっても分かりやすいです!
試験まであと残り17日、いままでの記事もしっかり見直して頑張ろうと思います(*^^*)
頑張ってください!✊