他人の土地だけど、「ちょっくら通らせてもらいます!」と通ることができる権利が、民法上には2つあります。
それが「通行地役権」と「囲繞地(いにょうち)通行権」です。
なんとなく同じような権利なのでごっちゃになっている方もいるかもしれませんが、中身を見ると違う点がたくさんあります。
勘違いしないよう、ここで違いを整理しておきましょう。
合意は必要か
まず、「通行地役権」は、地役権の一つです。
地役権は、要役地の所有者と承役地の所有者との契約(合意)によって設定されるものですので、「通行地役権」も当事者の合意が必要です。
一方で、「囲繞地通行権」は、袋地の人がその周りを囲む土地(囲繞地)を通行することを法律で認めたものですので、当事者の合意は必要ありません。
袋地側には、当然に通行が認められることとなります。
ちなみに、周りを囲まれた土地を囲繞地だと思っている方がたまにいますが、間違いですよ。
それは袋地です。囲繞地は「周りを囲んでいる土地」です。
囲繞地「を」通行することができる権利だから、囲繞地通行権です。
通行できる範囲は
「通行地役権」は、当事者の合意によって設定されるものですので、範囲に制限はありません。最短ルートである必要もありません。承役地の中央を幅10mに渡ってドカーンと通行できるようにする、とか、そういうのでも問題ないのです。(まぁ普通ないと思いますが 笑)
一方で、「囲繞地通行権」は、法律が通行することを認めたものですから、囲繞地の所有者にとっては不利益な規定です。
そのため、囲繞地にとって損害が最も少ない方法でなければなりません。
登記は必要か
「通行地役権」は、当事者間の合意で決まりますので、登記は必要ありません。
しかし第三者が出てきた場合、その第三者に通行地役権を対抗するためには、登記が必要です。
一方で、「囲繞地通行権」は、そもそも法律によって認められた権利ですので、登記制度自体がありません。
よって、何もせずに囲繞地通行権を主張できます。
これは袋地という環境に与えられている権利ですので、所有者だけではなく、借地人でも主張することができます。
対価は必要か
「通行地役権」は、(何度も書いていますが)当事者間の合意で決まります。
よって、対価についてもお互いの合意によります。
無償だって構わないわけです。
一方で、「囲繞地通行権」は、法律によって通行する権利を認めるものですから、囲繞地の所有者が被る損害分を「通行権者は支払わなくてはならない」とされています。(実際には当事者間の合意で決めるので、無償もありえますが)
ただ、もともと公道に接していた土地の一部を分筆・譲渡して袋地となった場合は、分筆して囲繞地となった土地を無償で通行可能です。
まとめ
通行地役権 | 囲繞地通行権 | |
---|---|---|
当事者の合意で成立 | 成立 | 法律によって 当然に成立 |
当事者の合意で決まる | 通行できる範囲 | 囲繞地にとって 損害が少ない範囲 |
必要 | 対抗要件としての登記 | 不要 |
当事者の合意で決まる | 費用 | 必要 ただし分筆によって 袋地となった場合は無償 |
通行地役権はとにかく「合意によって決まる」という点が大事ですね。
囲繞地通行権については、袋地の人の権利を認めつつ、囲繞地の所有者の不利益をなるべく抑えるようにしている点がポイントです。
違いを理解しておきましょう。
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