今回は、「時効取得」の判例で、ちょっと変わった内容を取り上げてみたいと思います。
それは、「自分のものであっても、時効取得できる」ということです。
自分のものを時効取得する?
何それ、意味が分からない( °Д°)
・・って感じですよね。
だってもともと自分のものなんだから。
それにほら、条文にだって「他人の物」って書いてありますよね?↓
1.二十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その所有権を取得する。
2.十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その占有の開始の時に、善意であり、かつ、過失がなかったときは、その所有権を取得する。
とうとう最高裁もご乱心か?と思ってしまいますよね。(それは僕だけか)
ところがです。
現実には、「所有権が本当は自分にあるのに、それを主張することが難しいケース」というのが存在するのです。
そういった事態に対応すべく、あくまで例外的にですが、「自分のものを時効取得することも可能」と最高裁は判示したのです。
どんなケース?
ではどんなケースが考えられるかを見てみましょう。
例えば、
です。
この場合、売主がその不動産の登記を第三者に移してしまったとすると、二重譲渡の規定からすれば、第三者の方が対抗要件を備えていることになります。
ある日突然第三者が現れて
「そこは俺の家だから明け渡せ」
と言ってきたら困りますよね。
本当は自分のものであると主張するのはなかなか困難です。
しかし、買主がその家に10年以上住んでいたらどうでしょうか。
占有開始時に善意無過失であれば10年で取得時効が完成しますから、「ここは私の家です」と主張することができるようになりますよね。
これが、自己の物を時効取得することを認めるメリットです。
他にも、
も考えられます。
もし契約が成立していないことになったら、自分は最初から不法占拠者だったことになってしまいます。それは辛いですよね。
こうした場合でも、一定期間を経過していれば、仮に契約が無効だったとしても所有権を主張できることになります。
このように、「本当は自分のものなのに、それを立証することが困難だったり、第三者に対抗することができない場合」には、例外的に自分の物でも時効取得が認められるようになっているのです。
覚えておきましょう。
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