「占有訴権」3種類の違いを分かりやすくまとめちゃう

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本日のテーマは「占有訴権」です。

占有というのは、「物を支配していること」をいいます。

例えば、AがBから物を借りた場合、物の所有権はBにありますが、占有はAがしている、ということになります。
(※より詳しくいえば、Aが直接占有、Bが間接占有です)

あくまで所有権はBにあるので、Aがその物を処分したりすることはできません。
しかし、Aが占有しているうちに、その物が他者に盗まれたり、何らかの妨害にあった(もしくはあいそう)な場合はどうすればいいでしょうか。
Aには所有権がないのでどうすることもできないのでしょうか?

いいえ、民法では、所有者だけではなく、占有している者にもその占有を守る権利を与えています。
それが「占有訴権」です。

では、占有訴権では一体どのようなことが認められているのか。
侵奪や妨害のケースによって、3つの種類がありますので、順番に見ていきましょう。

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占有保持の訴え

一つ目は「保持」です。
これは占有者が、その占有を妨害された場合に、妨害の停止および損害賠償を請求することができる権利となります。

もうすでに妨害が行われている(完了済み)、という点が特徴です。

たとえば、Aが借りている土地に、Bが粗大ゴミを放置していったというようなケース。
この場合に、AはBに対して占有保持の訴えを提起することで、ゴミの引き取りを求めることができます。そして、同時に損害賠償を請求することもできます。

[できること]
妨害停止請求 および
損害賠償請求
ただし、損害賠償請求については、不法行為に基づくものであると解されていますので、妨害者に故意・過失がある場合に限り請求できます(大判昭9.10. 19)。
例えば、落雷によってBの土地上の大木がAの土地に倒れたような場合、Bに故意・過失はないので、Aが請求できるのは妨害停止請求のみとなります。
占有保持の訴えは、
・妨害の存する間 または
・妨害が消滅した後一年以内
に提起することが必要です(妨害が消滅した後は、損害賠償請求のみできます)。
ただし、「工事」によって占有物に損害が生じた場合では、
・工事着手時から一年を経過 または
・工事着手時から一年を経過しなくとも、工事が完成したとき
は、もう提起することができないとされています。

占有保全の訴え

二つ目は「保全」です。
「保持」と文字面が似ていますが、中身は大きく違うので注意してください。

重要な違いは、まだ妨害は行われていない(未完了)という点です。
まだ妨害されてはいないけれど、このまま放っておくと妨害されるおそれがあるので、対処を求める権利となります。

たとえば、Cが占有する土地の隣に住むDの家の壁が、今にも崩れ落ちそうになっているようなケース。
まだ崩れているわけではないので、占有は妨害されてはいません。
しかしこのままでは、明らかに危ないわけです。

この場合、CはDに対して、壁が崩れてこないように対策を講じるよう請求することができます。(予防の請求)

また、もし崩れてきたら損害賠償を請求することになるので、前もって「担保となるものを提供してください」と請求することも可能です。(担保の請求)

これが、占有保全の訴えです。

ここで注意して頂きたいのが、「妨害の予防請求」と「損害賠償の担保の請求」は、どちらか一方しか行えないという点です。

先ほどの「保持」では、「妨害停止請求」と「損害賠償請求」のいずれもが行えましたが、「保全」ではどちらか一方のみとなります。

なぜかというと、妨害の予防をしてもらえたら、その時点で問題は解決しますので、担保を請求する必要はないからです。
逆に、担保を請求したのなら、損害の発生を覚悟しているのだから、予防も必要ないわけです。

ということで、こういう「他とちょっと違うところ」は問題になりやすいのでチェックしておいてくださいね。

[できること]
妨害の予防請求 または
損害賠償の担保の請求
占有保全の訴えは、妨害の危険の存する間は、提起することができます。
なお、工事によって占有物に損害が生じるおそれがあるときは、占有保持の訴えと同様に
・工事着手時から一年を経過する または
・(工事着手時から一年を経過しなくとも)工事が完成したとき
は、もう提起できません。

占有回収の訴え

三つ目は「回収」です。
これは占有を「奪われた」場合に、その物の返還請求および損害賠償を請求することができる権利です。

たとえば、EがFから借りていたカメラをGに奪われたようなケース。
この場合、EはGに対して「カメラを返せ!」と請求できますし、同時に損害賠償も請求できます。

[できること]
返還請求 および
損害賠償請求

さて、占有回収の訴えに関しては、いくつか注意があります。

まずは、「善意の特定承継人」が登場した場合です。

先ほどの例でいえば、Gが事情を知らないHにカメラを譲渡していたようなケース。
こうなると、EはHに対して返還請求することはできません。
なぜならHは即時取得しているからです。

 

あれ?ちょっと待って。
即時取得していても、盗品の場合は2年間は回復請求できるんじゃなかった?

 

そう思った方はとても素晴らしい!
そして惜しい!

民法193条の回復請求が認められているのは、所有権です!
先ほどの例でいえばFには認められます。
しかしEには占有権しかありませんので、認められません。

よって、一度善意の特定承継人に渡ってしまうと、占有回収の訴えでは回収できなくなります。
(※悪意であれば回収可能です)

 

注意点の2つ目は、回収の訴えが認められるのは、あくまで「奪われたとき」であるということです。

例えば

・詐欺にあって手放した場合
・失くした場合

には認められません。

なお、占有回収の訴えは、「占有を奪われた時から1年」以内に提起する必要があります。

 

以上です!
細かい違いを問われても答えられるよう、しっかり覚えてくださいね!

民法
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