「求償」・・債権の分野ではよく見る言葉ですよね。
保証、連帯保証、連帯債務。
それぞれにおいて、どの範囲で求償できるのか?が異なっています。
勉強していて混乱してしまう方も多いのではないでしょうか。
そこで、今回はこの「求償の範囲」について説明したいと思います。
並べて比較すると分かりやすいですよね。
保証人の場合
保証人が債務を弁済した場合、求償する相手はほぼ主債務者です。(後述する「分別の利益」があるからです)
それでは見ていきましょう。
主債務者に対する求償
求償できる範囲は、「どのような経緯で保証人になったか」で3通りに分かれます。
ここではモデルケースとして以下の設定で考えます。
借金の元本と利息の合計:100万円
保証人が弁済してから求償するまでの利息:2万円
保証人が弁済するときにかかった手数料:500円
①主債務者から委託を受けて保証人になった場合
「頼まれて保証人になってあげた人」ですから、一番厚遇されます。
一言で言ってしまえば、かかった費用全部を求償できます。(損害賠償も請求可能)
100万円+2万円+500円=102万500円
②主債務者から委託を受けないで保証人になった場合
「頼まれてもいないのにおせっかいで保証人になった人」です。
この場合、当時に(=弁済時に)おいて主債務者が利益を受けた限度(=支払わずに済んだ額)で求償できます。
つまり、借金の元本と利息のみです。求償するまでの利息や、弁済にかかった費用などは認められません。
100万円のみ
③主債務者の意思に反して保証人になった場合
主債務者が「やめてくれ」と言ったのに「無理矢理保証人になった人」です。
この場合は、現に(=求償時に)主債務者が利益を受けている限度で求償できます。
もし保証人が弁済して求償する前に、主債務者が債権者に対して20万円の反対債権を取得したような場合、その分は元の債務と相殺できたはずですから、求償できる分から引かれます。
100万円-20万円=80万円
他の保証人に対する求償
では保証人が複数いた場合は、他の保証人に対してどれだけ求償できるでしょうか?
保証人には「分別の利益」があります。つまり、債権者に対して負う保証債務は頭割りとなります。
債務が100万円で、保証人が2人の場合、一人あたりの保証債務は50万円となります。
そもそもそれ以上責任を負わないため、債権者から請求されても拒否できます。
そのため、求償すること自体が稀です。
ただし、もし一人が100万円全額を弁済した場合は、他の保証人に対して50万円を求償できます。(主債務者に対する上記②③の規定が準用されます)
連帯保証人の場合
保証人より責任の重い連帯保証人。こちらには「分別の利益」がありません。
(ちなみに「催告の抗弁権」「検索の抗弁権」もありません)
つまり、連帯保証人はたとえ複数いたとしても、債権者との関係(外部関係)では債務の全額に対して責任を負います。
しかし連帯保証人の間(内部関係)では、合意によって負担部分を決めることができ、負担部分を超えた金額は求償できます。
債務:100万円
連帯保証人Aの負担部分:60万円
連帯保証人Bの負担部分:40万円Aが80万円を弁済した場合、AはBに対し、20万円を求償できる。
(※80万円-60万円)
連帯債務の場合
連帯債務は、全員が同等の債務者となります。
こちらも連帯保証と同様、債権者との関係(外部関係)では債務の全額に対して責任を負います。
そして連帯債務者の間(内部関係)では、負担部分を超えた部分を他の連帯債務者に求償できます。
ところが、です。
この負担部分は、金額ではなく「割合」というのが判例の考えです。
債務:100万円
連帯債務者Aの負担部分:60万円
連帯債務者Bの負担部分:40万円Aが80万円を弁済した場合、AはBに対し、32万円を求償できる。
※計算方法
AとBの負担割合は、60:40=3:2
◆Aが支払う割合 → 80万円÷(3+2)×3=48万円
◆B 〃 → 80万円÷(3+2)×2=32万円
ただし、連帯債務者の一人が弁済をする際は、他の連帯債務者に対して事前の通知が必要とされています。もしかすると他の連帯債務者が反対債権を有していて、相殺ができたりするかもしれないからです。
そのため、もし事前の通知をせずに弁済をした場合は、相手に求償できない場合があります。
(※その人の負担部分は、残りの連帯債務者が負担割合に応じて負担します)
コメント
いつも楽しくというか、勉強のため拝見させていただいています。
非常にわかりやすく簡潔にまとめられているので、参考にさせていただいています。
質問なのですが、
保証人の場合の②のところで、
「元本と利息のみです。利息や、弁済にかかった費用などは認められません。」
と記載がありますが、元本と利息のみ求償できるのであれば、102万円とはならないのでしょうか。
分かりづらい表現で失礼しました。
「元本と利息」というのは、「借金の元本と利息の合計:100万円」を指します。
「保証人が弁済してから求償するまでの利息:2万円」は請求できないのです。
(「弁済時に」利益を受けた限度となりますので)
言葉足らずだったので修正しました。
ご指摘ありがとうございます。