今回は「差押え」と「相殺」がぶつかったとき、どちらが勝つのか?という内容です。
まずはこんな事例を見てみましょう。
佃氏は東京中央銀行に預金をしており、同時に東京中央銀行から融資を受けていた。
ところが、佃氏は国税を滞納していた。
そこで国税局は佃氏の預金を差し押さえようと、東京中央銀行に通知を送った。
通知を受け取った東京中央銀行は、「佃氏の預金はウチの貸付金と相殺するので、国税局さんの差押えはできませんよ」といった。果たしてどちらが勝つか。
(※下町ロケットは何の関係もありません)
答え:東京中央銀行
民法第511条
支払の差止めを受けた第三債務者は、その後に取得した債権による相殺をもって差押債権者に対抗することができない。
支払の差止めを受けた第三債務者は、その後に取得した債権による相殺をもって差押債権者に対抗することができない。
「差押え後に取得した債権では、差押えに対抗できない」というのはつまり、「差押え前に取得していた債権ならOK」ということです。
つまり、「差押え」と「相殺」がぶつかったときは、反対債権を取得した時期が、差押えの前か後かで勝負が分かれるということです。
差押えより前 → 相殺が勝つ
差押えより後 → 差押えが勝つ
差押えより後 → 差押えが勝つ
上記の例でいえば、東京中央銀行が反対債権(佃氏への貸付債権)を取得したのは、国税局の差押えよりも前であるわけです。だから東京中央銀行が勝つということなのですね。
そしてこの場合、債権の弁済期の前後は問わないとされています。
相殺適状に達しさえすれば、相殺ができます。
物上代位による差押えと相殺の場合は違う
先日「物上代位」でも、差押えと相殺について少し触れました。
実はあれは少し特殊なケースです。
というのも、物上代位による差押えの場合は、「差押え時」ではなく「抵当権設定時」を基準に判断されることになります。
反対債権を取得したのが「抵当権設定」よりも前であれば相殺でき、後であれば相殺できない(差押えが勝つ)ということになります。
この違いは押さえておきましょう。
抵当権設定より前 → 相殺が勝つ
抵当権設定より後 → 差押え(物上代位)が勝つ
抵当権設定より後 → 差押え(物上代位)が勝つ
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