改正後の「危険負担」についてはこちらをご覧ください。
以前「危険負担」の投稿をした際に触れていなかった部分があったので追記します。
それは、「停止条件付きの双務契約」だった場合です。
「停止条件」というのは、将来、条件が成就したら効力が発生するというものです。
例えば、
「東京に転勤したら家を売ってあげる」
「結婚したら指輪を買ってあげる」
「行政書士試験に合格したら開業費用を出してあげる」
・・などのような契約が停止条件付きの契約です。
危険負担の問題が生じるのは「停止条件付きの双務契約」なので、
「東京に転勤したら家を売ってあげる」(※停止条件付き売買契約)
という例で考えてみたいと思います。
(「指輪を買ってあげる」といった場合は、片方だけが債務を負う片務契約なので、危険負担の問題はおきません)
「滅失」か「損傷」で結論が異なる
前回の説明では、「特定物の場合は買主(債権者)が負担」と言いました。
今回のケースも特定物ですが、同じように買主(債権者)が負担することになるのでしょうか?
実はこれは「滅失」の場合と「損傷」の場合で結論が異なります。
滅失の場合は、売主負担(債務者主義)
損傷の場合は、買主負担(債権者主義)
となるのです。
例えば、東京に転勤が決まり(条件が成就し)、いざ買主が家を売ってもらおうと思った時に、
もし家が滅失していたら、お金を支払わなくてよい
もし家が損傷レベルだったら、お金を支払う必要がある
ということになります。
覚え方としては、
せっかく条件が成就したのに、目的物が滅失していてもお金を払わないといけないのは酷すぎる!だから売主の負担でいいよね。(=債務者主義)
損傷くらいなら、引渡しできないわけじゃないからお金は払わないといけないよね。停止条件の場合は成就するまでに時間がかかるから、それくらいのリスクは買主が負うべきだよね。(=債権者負担)
的な理解でいいと思います。
なお、損傷の原因が売主のせいだったときは、買主は「履行の請求(そのまま引渡してもらう)」か「契約の解除」のいずれかを選択できます。
そして、いずれの場合も賠償請求を請求することが可能となっています。
「引渡しはしてもらうけど、傷つけた分は賠償してね!」
もしくは
「傷ついてるならもういらない!その代わり損害を賠償してね!」
と言えるということですね。
「停止条件」の勉強は混乱しがちなところですが、実例で理解していくと分かりやすいと思いますよ。
コメント
これは、停止条件の条件成就した時(法律の効果が発生する時)に特定物が滅失してるから
っていうことですか?
コメントありがとうございます。
> これは、停止条件の条件成就した時(法律の効果が発生する時)に特定物が滅失してるからっていうことですか?
「これは」がどの部分を指しているのがちょっと分からないのですが、滅失のときに売主負担になるという点でしょうか?
もしそうであれば、まさにそういうことですね。滅失によって所有権を移転できませんので。