【問題】
Aは、甲不動産をBから購入し、所有の意思をもって、平穏に、かつ公然と占有した。
しかし、甲不動産の真実の所有者は実はCであった。
Bが占有を開始した当初Bは悪意であり、その占有は5年間継続された。
Aが占有を承継した当初Aは善意無過失であったが、占有開始から4年目においてBが真実の所有者ではなかったことを知った。その後、Aは6年間占有を継続した。
この場合につき、Aが甲不動産を時効取得できるかについて、その可否および理由を40字程度で答えよ。
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【解答例】
Aは占有開始時において善意無過失であり、要件の10年を満たしているため、時効取得できる。
時効取得および占有の承継についての問題です。
時効取得における善意か悪意かの判定は「占有開始時」においてなされます。
Aは占有開始時において善意であったので、その後に悪意となったとしても取得時効は10年のままで変わりません。
また、占有が承継されている場合、期間の算定は「自己の占有のみ」か「前の占有者の占有と併せる」かを自由に選ぶことができます。
Aは、自己の占有のみで10年、もしくはBの占有と併せて15年のどちらかを選ぶことになりますが、Bは占有開始時に悪意であるためBの占有を併せた場合は20年間が必要となり、取得要件を満たしません。
つまりAは自らの占有の10年のみ主張すればよいことになります。
よって、Aは占有開始時において善意であり、自己の占有期間だけで10年を経過しているので時効取得することができます。
第162条(所有権の取得時効)
-
- 二十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その所有権を取得する。
- 十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その占有の開始の時に、善意であり、かつ、過失がなかったときは、その所有権を取得する。
第187条(占有の承継)
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- 占有者の承継人は、その選択に従い、自己の占有のみを主張し、又は自己の占有に前の占有者の占有を併せて主張することができる。
- 前の占有者の占有を併せて主張する場合には、その瑕疵をも承継する。
こちらもご参考までに。
「時効」の重要ポイントまとめ
今回のテーマは「時効」です。
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種類は
・特定の年数が経過することにより権利を得られる「取得時効」と...
即時取得と時効取得、無過失まで推定されているのはどちら?
「即時取得」と「時効取得」は、どちらも“占有”によって、他人の物の所有権を取得することのできる規定です。
第192条(即時取得)
取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、善意であり、かつ、過失がない...
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