地役権をこの1ページで分かりやすく解説

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地役権とは

地役権とは、「他人の土地を自己の土地の便益に供する権利」のことです(民法280条)。

例えばAさんが持っている甲土地と、Bさんが持っている乙土地があるとします。
Aさんが道路に出ようと思ったときに、Bさんの乙土地を通った方が早くて便利、というようなときに、AさんがBさんに

お宅の土地を通行させてください

とお願いして、Bさんとの間で話がまとまれば、通行地役権というものを得ることができます。

図にすると以下のような状態です。

つまり、「他人の土地(乙土地)を、自己の土地(甲土地)の便益のために使う権利」ということですね。

ここでは、赤い斜線部分について通行させてもらう権利を取得しています。
(この赤い斜線部分を「地役権設定の範囲」といいます)

このとき、Aさんの甲土地(使わせてもらう側の土地)のことを「要役地」、Bさんの乙土地(使われる側の土地)のことを「承役地」といいます。

Aさんのことは「地役権者」、Bさんのことは「地役権設定者」といいます。
ちなみに、地役権には色々な種類があって、上記のような「通行地役権」の他に、眺望を確保するために高い建物を建てさせないようにする「眺望地役権」や、高圧送電線の安全確保のための「送電線路敷設地役権」などがあります。

地役権は当事者間で決められるものなので、契約の内容は公の秩序に違反しなければ自由です。

通行地役権と似たような権利に「囲繞地通行権」というものがありますが、その違いは以下のページで押さえておきましょう。

「通行地役権」と「囲繞地通行権」の違いを答えられますか?
他人の土地だけど、「ちょっくら通らせてもらいます!」と通ることができる権利が、民法上には2つあります。 それが「通行地役権」と「囲繞地(いにょうち)通行権」です。 なんとなく同じような権利なのでごっちゃになっている方もい...

 

地役権の付従性(281条)

地役権には、「付従性」という特徴があります。

付従性とは、簡単にいえば「付き従う(=ピッタリくっついて離れない)」という意味です。

どういうことかというと、地役権は要役地の所有権に付き従う(くっついて離れない)権利なので、要役地の所有権が移転すると、それと一緒に地役権も新所有者へ移転する、ということです。

先の例でいえば、Aさんが甲土地をCさんに売却した場合、Cさんが地役権を取得することになり、CさんはBさんの乙土地を通行することができるようになるのです。
(このとき、Bさんの承諾は必要ありません)

また、くっついて離れないので、甲土地から切り離して地役権だけを譲渡する、といったこともできません。

 

地役権の不可分性(282条)

また、地役権には「不可分性」という特徴もあります。
これは読んで字のごとく「分けることができない」という意味です。

どういうことかというと、先の例で、甲土地の所有者がXとYの2人だったとします(持分1/2ずつの共有)。
このとき、Xだけが、

俺、地役権いらないや

と思ったとします。
そこで、自分の持分である1/2についてだけ地役権を消滅させようとしました。

できるでしょうか?

答えは×です。

地役権はその持分についてだけ消滅させる、といったことはできないのです。

地役権は、「甲土地(要役地)は乙土地(承役地)を使える」という権利なのであって、共有者の誰かだけが使える、といった権利ではないのです。

また、要役地や承役地が分筆により複数の土地に分かれたとしても、地役権はそれぞれの土地に残ります。
(合意によって一部の土地についてのみ地役権を消滅させるといったことは可能ですが、ここでは深追いしません)

地役権の時効取得(283・284条)

実は、地役権は時効取得することが可能です。

今までの例においては、あくまで要役地所有者と承役地所有者の間の話し合いで権利が設定されていましたが、こうした話し合いがなかったとしても、地役権は取得することができるのです。

その要件は「継続的に行使され、かつ、外形上認識することができるものに限る」とされています。

簡単に言い換えれば、「ずっと使っていて」、しかも「見たらそれが分かる」状態になっていることが必要だということ。

なお、これは、地役権を取得する側(要役地の所有者)が自ら行使しなければなりません。

通行地役権であれば、その人が自ら通路を開設する必要がある、とされています(もともとあった通路を使っていただけではダメ)。
それを20年間使い続ければ、めでたく通行地役権の時効取得です。

 

さて、取得時効においては、地役権にはもう一つ重要な論点があります。
それは共有だった場合です。

地役権を取得する側の土地が、XとYの共有だったとします。
このとき、Xにだけ時効が完成したらどうでしょうか。

結論をいうと、Xが地役権の時効取得を援用すると、Yも地役権を時効取得することになります。
これは先ほどの不可分性と同じ話で、Xだけが地役権を取得し、Yには地役権がない、といった状態にはできないからです。
そのため、共有者の一人が地役権を時効取得すると、他の共有者も同様に取得するのです。

 

さて、次は、時効取得されてしまう側(承役地となる側の所有者)に目を向けてみましょう(Bさんとしましょう)。
今、地役権を時効取得しそうな人がXとYの2人いたとします。
Bさんとしてはそれを阻止したいはずです。

そこで、Bさんは、時効が完成する直前に、Xに対してだけ裁判上の請求を行いました。
一方で、Yについてはそのまま時効が進行し、完成しました。

この場合、Yが時効を援用すると、Xも地役権を時効取得します。
先ほどと同じで、共有者の一人だけが地役権を取得する、ということはないからです。

つまり、Bが時効を更新させようと思ったら、共有者全員に対して行わなければならないのです。

このように、地役権は不可分性によって取得しやすいようになっています。

地役権の消滅時効(291~293条)

さて、今までは地役権の「取得時効」を見てきましたが、今度は「消滅時効」も見ておきましょう。

地役権は
①「継続的でなく行使される地役権」の場合はその最後の行使の時から
②「継続的に行使される地役権」の場合はその行使を妨げる事実が生じた時から
消滅時効のカウントがスタートします。

①はマイナーなので、とりあえず文言だけ押さえておけばよいでしょう。

②は理解しておきたいです。
継続的に行使される地役権の代表例はやはり通行地役権です。
例えば、承役地の所有者が、通路上にフェンスを設置したことにより、通路が通れなくなってしまったとします。
すると、要役地の所有者は地役権を行使することができなくなりますから、そのときから地役権の消滅時効が進行します。
したがって、このまま20年が経過すると、地役権は消滅することになります。

しかし、要役地の所有者(XとY)としては、地役権が消滅してしまったら困ります。
そのため、時効の完成猶予や更新を計るために、Bに対して裁判上の請求等を起こすことになるでしょう。

このとき、もしXだけがBに裁判上の請求をしたとしても、Yにとっても時効の完成猶予や更新の効力が発生します。
これも不可分性の話で、一部の共有者にだけ消滅するといったことはないからです。

 

以上見てきた通り、地役権はその不可分性により、

取得しやすく
消滅しづらい

性質があります。

もし正確な知識がなくても、この性質さえ知っておけば多くの問題のヒントになると思うので、覚えておきましょう。

民法
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