法定地上権を分かりやすく解説 これで一瞬で判断できるようになります

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民法を勉強していて、多くの方が混乱されるのが、法定地上権ではないでしょうか。
行政書士試験に限らず、宅建士や司法書士を勉強中の方もここでつまづく方が多いと思います。
今回はそれを分かりやすく説明してみたいと思います。

 

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そもそも法定地上権とは何なのか?

地上権というのは、物を支配し利用する権利(物権)の一つです。
その名前の通り、土地を使う権利です。

自分の土地であれば、土地を利用できるのは当たり前なので、わざわざ地上権というものがあるということはつまり、「他人の土地」を利用できる権利なわけです。

法定地上権とは、「法律によって」「他人の土地を」「合法的に利用できるようにした権利」です。

 

法定地上権の成立要件のおさらい

まずは成立要件をおさらいしておきましょう。

    1. 抵当権設定時土地上に建物がある
    2. 抵当権設定時土地と建物の所有者が同一である
    3. 土地、建物の両方又は一方に抵当権が設定される
    4. 抵当権が実行され、土地と建物が別の所有者となる

要件はベースとなる知識ですので一応押さえておいてください。
ただし、実際の試験でこの要件が問われることはほとんどないと思われます。
事例が提示されて、「この場合は成立するか?しないか?」が問われるのがオーソドックスです。
ではそれをどうやって解けばいいのでしょうか?

 

実は超簡単!成立するかどうか

こういってしまうとアレかもしれませんが、法定地上権は、問題文を読んだだけで一瞬で判断できるようになります。

なぜかというと、考える必要がほとんどないからです。

法定地上権の問題は、判例で争われたポイントしか出題されません。
要件が成立するかどうかはかなり難しい問題なので、裁判官もかなり悩んで判決を出しているからです。
過去に争われたことのないポイントは、裁判してみないと分からないため出題することができません。

つまり、法定地上権は特定のキーワードと結論だけを覚えておけば解けてしまいます。

以下にまとめておきましたので、見ていきましょう!

 

更地に抵当権が設定
↓↓↓
成立しない!

建物が再築された
↓↓↓
成立する!(旧建物の範囲内で)

土地と共同抵当に入っていた建物が再築された
↓↓↓
成立しない!
(新建物に、土地の抵当権と同順位の共同抵当権の設定を受けたなどの特段の事情がある場合は、成立する)
※詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください。

建物が未登記だった
↓↓↓
成立する!
登記がなくても、実体上は要件を満たしている

所有権移転登記をしていなかった
↓↓↓
成立する!
登記がなくても、実体上は要件を満たしている

競売時に同一の所有者
↓↓↓
成立しない!
あくまで抵当権設定時に同一の所有者であることが要件

土地の二番抵当権設定時に同一の所有者
↓↓↓
成立しない!
土地一番抵当権設定時で判断する
(ただし、競売前に一番抵当権が消滅している場合は成立する)

建物の二番抵当権設定時に同一の所有者
↓↓↓
成立する!
建物後順位の抵当権設定時で判断する

土地が共有
↓↓↓
成立しない!
土地の共有の場合は、共有者の同意がない限りどんな例であっても成立しない

建物が共有
↓↓↓
土地の所有者が単独であれば、成立する!
土地の所有者も共有であれば、成立しない!

 

まとめるとこんな感じ

成立する 成立しない
  • 建物が再築された
  • 建物が未登記だった
  • 所有権移転登記をしていなかった
  • 建物の二番抵当権設定時に同一の所有者
  • 建物が共有(※土地所有者が単独であることが条件)
  • 更地に抵当権が設定
  • 土地と共同抵当に入っていた建物が再築された(※土地の抵当権と同順位の共同抵当権の設定を受けた場合は成立)
  • 競売時に同一の所有者
  • 土地の二番抵当権設定時に同一の所有者(※競売前に一番抵当権が消滅していた場合は成立)
  • 土地が共有

これだけ覚えておけばOKです。
実際に問題文などで、上記のどれに該当するのか見極める練習をしてみてくださいね。

 

(追記1)単なる再築と、土地と共同抵当での再築の違い

 

「単なる再築」は法定地上権が成立するのに、「土地と共同抵当に入っているときの再築」は成立しないのはなぜ?

 

ご質問を頂いたので、お答え致しますね。

判断のポイントは、「抵当権者が損をするかしないか?」という点になります。

まず、2つの事例は抵当権が設定されている範囲が異なります。
「単なる再築」の方は、土地に抵当権が設定されているケースです。
建物がある状態で設定されているので、そもそも法定地上権が成立することを前提に担保価値が算定されています。
だから再築しても、旧建物の範囲であれば抵当権者は損をしないのです。よって法定地上権が成立します。

一方、「共同抵当」の方は、土地と建物の両方に抵当権が設定されているケースです。
建物が滅失してしまうと建物の抵当権も消滅しますから、抵当権者に残されたのは土地のみになります。
しかし、土地は建物がなくなったことで逆に担保価値が上がる(更地の方が価格が高くなる)ので、全体として見ると「プラマイゼロ」のような感じになります。つまり、この状態であれば抵当権者は損をしていません。

ところが、もしここで再築した建物に法定地上権が成立してしまうとどうでしょうか?
土地の担保価値が下がり、抵当権者が損をしてしまうことになります。
それを防ぐには、再築した建物に再び共同抵当権を設定する必要があるわけです。

つまり、再築した建物に土地と同順位の共同抵当権が設定される、といった特段の事情がない限り、法定地上権は成立しないことになっているのです。

 

(追記2)「二番抵当権設定時」のときの判断の違い

 

二番抵当権設定時に同一の所有者であったときに、土地と建物で扱いが違うのはどうして?

というご質問があったのでお答えします。

先ほどもお伝えした通り、法定地上権において主に検討されるのは、抵当権者が損をするかしないか、です。
法定地上権が成立した場合、建物はそのまま存続するので建物にとって都合はよいですが、土地にとっては不都合となります。
つまり、建物の抵当権者なのか土地の抵当権者なのかによって、考え方は逆になるのです。

建物に1番抵当権が設定された当時は土地と建物の所有者が異なっていたが、2番抵当権が設定された当時は双方の所有者が同一となった場合には、1番抵当権者の申立てによる競売が行われたときでも、法定地上権が成立する(大判昭14.7.26)。

という事例は、建物の所有者が、元々借地であった土地を取得した事例になります。
1番抵当権者は、土地が借地の状態で建物の抵当権者となっています。もし建物の所有者が土地を取得せずにそのまま抵当権が実行された場合、その建物は賃借権ごと新所有者に移転しますから、建物は存続できることになります。
しかし、土地を取得したことによって法定地上権が成立しないのだとしたら、建物は存続できませんから、1番抵当権者は損をしてしまうことになります。
よって、法定地上権の成立を認めています。

土地に1番抵当権が設定された当時は土地と建物の所有者が異なっていたが、2番抵当権が設定された当時は双方の所有者が同一となった場合には、法定地上権は成立しない(最判平2.1.22)。

という事例の場合、土地の1番抵当権者は、法定地上権が成立しない前提で担保価値を見込んでいますから、その後に法定地上権が突然成立することになると、不利益を被ってしまいます。
よって、法定地上権は成立しないとされているのです。

民法
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コメント

  1. 若名 より:

    下記、「抵当権無で再築→成立、抵当権有で再築→成立しない」の違いを教えていただけますか。

    建物が再築された
    ↓↓↓
    成立する!(旧建物の範囲内で)

    土地と共同抵当に入っていた建物が再築された
    ↓↓↓
    成立しない!

    • gyoseishoshi より:

      若名さん

      こんばんは。コメントありがとうございます。
      これは抵当権者側に立って考えてみると分かりやすいと思います。

      「単なる再築」の方は、土地に抵当権が設定されている場合となります。
      設定当時に建物がある状態ですから、そもそも法定地上権を前提に担保価値が算定されています。
      だから再築しても、旧建物の範囲であれば抵当権者は損をしないことになります。

      一方、「共同抵当」の方は、土地と建物の両方に抵当権が設定されている場合となります。
      建物が滅失してしまうと建物の抵当権も消滅しますから、抵当権者に残されたのは土地のみになります。
      しかし、土地は建物がなくなったことで逆に担保価値が上がるので、
      「プラスマイナスゼロ」のような感じになります。
      つまり、抵当権者は損をしないことになります。

      ところが、もしここで再築した建物に法定地上権が成立してしまうと、
      土地の担保価値が下がってしまい、抵当権者が一方的に損をしてしまいます。

      ですから、再築した建物に土地と同順位の共同抵当権が設定される、といった
      特段の事情がない限り、法定地上権は成立しないということになっています。

    • ろう より:

      はじめまして。
      当方、司法書士を目指し勉強していて、法定地上権の成立可否で躓き、こちらのサイトを拝見させていただきました。
      成立するかしないかは考える必要がないと書かれていて、半信半疑で問題を解いたところすべて正解でした!
      なんて万能なんだと感動しました笑
      素晴らしい回答法を教えていただきまして本当にありがとうございます。

      • gyoseishoshi より:

        ろうさん、コメントありがとうございます!
        そうなんです、法定地上権は考えたら負けです(笑)
        司法書士の勉強頑張ってくださいね!

  2. 初心者 より:

    平成23年問30の肢2のついて、どれに当てはまるか検討しました。
    土地の2番抵当設定時に、同一所有者になってるケースだと思うのですが、解答は法定地上権は成立するとなっています。
    この場合の考え方を教えて頂けると助かります。

    • gyoseishoshi より:

      初心者さん
      コメントありがとうございます。
      違いは、「競売前に1番抵当権が消滅している」という点です。
      こちらは「土地の2番抵当設定時に、同一所有者になっているケース」の唯一の例外で、成立することになっています。
      解説に入っておらず失礼致しました。追記致します。

  3. 法律勉強初心者 より:

    現在法律を勉強し始めた者で、教えて頂きたくてコメントしております。

    建物にのみ抵当権が設定されている場合でも、4つの要件で法定地上権が成立すると認識しています。

    ただ、建物と土地の所有が別々の状態で、建物にだけ抵当権が設定された場合、法定地上権を発生させないと、競売にかけても買い手がつかない=抵当権者の債権担保にならないのでは?と考えてしまいます。そもそも、建物所有者Aと土地所有者Bの間では、何かしらの契約等で建物所有が成立していることは推測できますが、Bとしては、同様の建物が継続することにマイナスはないと思えるのです。

    それならば、債権者の担保=法定地上権成立で買い手がつく となってもおかしくないのでは…と思うのですが、何か間違っているのでしょうか?

    他のパターンは、なぜ成立するのか、しないのかは理解できるところがあるのですが、これだけよく分かりません。何かロジックがあれば教えていただきたいです。

    • Yutaka_0125 より:

      その建物の所有者は借地権(地上権か賃借権)を有しているわけでしょう。
      そうでなければただの不法占拠になりますから。
      土地の上に登記済みの建物を有していればそれをもって借地権は対抗要件を備えます。
      その建物に抵当権を設定し、競売されれば、競落人はその借地権ごと建物を手に入れることができます。
      なお、賃借権だった場合には土地所有者の承諾が必要ですが、仮に承諾が得られなくても裁判所に申し立てることで許可を受けられます。
      なので引き続き建物はそこに存続できるのです。