取消訴訟の訴訟要件の1つに、「処分性」というものがあります。
処分性とは、「公権力を行使して、国民の権利義務に直接影響を与えること」をいいます。
(処分性についてはこちらのページもご覧ください)
さて、今回のテーマはタイトルの通り。
「土地区画整理事業の事業計画」に処分性はあるのか?
というものです。
こまごま解説する前に結論を書いておきますが、
おそらく試験において一番重要なのはここなので、それだけ知れれば十分!という方は以下は読まなくても大丈夫です。
ただ、一応判例変更があった部分なので、詳しく見ておくと理解が深まると思います。
土地区画整理事業ってなに?
土地区画整理事業とは、簡単にいえば、不整形な土地の区画を整えて使いやすくしよう、という事業です。
道路や公園なども整備することで、住宅地としての利用価値が高まります。
へぇ!いいじゃん!ぜひやろうよ!
と思いますが、もちろんメリットばかりではありません。
何しろ大規模な事業ですから、完了するまでに相当な期間がかかります。
短くても10年ほど、長いものだと数十年かかることもあります。
自治体が事業計画を定めると、土地区画整理法という法律によって、区域内の土地所有者は自由に新築や増築ができなくなるので、かなり長い間不便さを強いられることになるわけですね。
判例が変更された
土地区画整理事業に沿って行われる各種の処分(仮換地の指定や換地処分)にはもちろん処分性が認められます。
そのためこれらに対して取消訴訟を提起することは可能です。
しかし「計画」の段階においてはどうでしょうか。
従来は「計画は一般的・抽象的な青写真に過ぎない」として処分性を否定していました。(最判昭和41年2月23日)
つまり、訴訟要件を満たさないとして却下していたのです。
ところが、平成20年9月10日判決では一転して「土地所有者の法的地位に直接的な影響が生ずる」として処分性を肯定しました。
なぜかといえば、
計画が決定された時点で、もうその後の「換地処分」を受けることも決まっているから
なんですね。
(うん、まぁそりゃそうでしょう。気付くの遅くない?!)
そして、換地処分まで進んだ時点で取消訴訟を提起したとしても、事情判決によって棄却される可能性が高いことから、救済として不十分であるという点も理由に挙げています。
確かにこれでは何のための取消訴訟か分かりませんよね。
そこで土地所有者の権利を保護するため、計画決定の段階でも取消訴訟を提起できるようにしたわけです。
昭和41年判決にはもともと批判が多かったようなので、ようやく妥当な判決が出たということでしょう。
この内容については、平成28年問19でも問われていますのでチェックしておいてください。
コメント