【問題】
AはBに対しA所有の絵画を売却した。
しかしBはすぐに持ち帰ることができなかったため、合意の上で、引き続きAが保管することになった。
ところが、Aはその後、善意無過失のCに対して当該絵画を売却し、現実に引き渡してしまった。
この場合、BはCに対抗することができるか。
誰がどのような方法によって所有権を取得しているかに言及しつつ、40字程度で答えよ。
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(これ以上は、解答を書いてからスクロールしてください)
【解答例】
Cが即時取得により所有権を取得しているため、BはCに対抗することができない。
動産物件変動についての問題です。
不動産の対抗要件は「登記」ですが、動産の対抗要件は「引渡し」となります。
つまり、先に引渡しを受けた方が所有権者となります。
動産に関する物権の譲渡は、その動産の引渡しがなければ、第三者に対抗することができない。
本件のAB間における占有の移転を「占有改定」といいます。
絵画は引き続きAの元にありますが、占有権はBに移るということです。
(A:直接占有 B:間接占有)
この場合、Bは絵画を所持しているわけではありませんが、「引渡し」があったものとして認められます。
代理人が自己の占有物を以後本人のために占有する意思を表示したときは、本人は、これによって占有権を取得する。
ところがです。
占有改定の場合、動産を直接占有しているのはAなので、第三者Cには真の所有権者がBであることが分かりません。
そこで、もしCが善意無過失であれば、「即時取得」が適用されCの方が所有権を取得することになります。
取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、善意であり、かつ、過失がないときは、即時にその動産について行使する権利を取得する。
つまり
A→B 占有改定 (負け)
A→C 現実の引き渡し (勝ち)
となり、BはCに対抗できないことになります。
占有改定は引渡し方法としては不十分なものなので、現実の引き渡しの方が勝つわけですね。
結論が逆となるケース
ただし、です。
もしCが現実の引き渡しではなく、Bと同様に「占有改定の方法により」引渡しを受けていたらどうでしょうか。
この場合は、どちらも同じ占有改定なので、先に引渡しを受けたBが勝つことになります。
A→B 占有改定 (勝ち)
A→C 占有改定 (負け)
あれ?Cは即時取得しないの?と思うかもしれませんが、占有改定の方法では即時取得は認められていません。

つまり、原則通り先に引渡しを受けた方が対抗要件を備えることとなります。
占有の移転に関してはこちらの問題も解いておいてください。

コメント
CはBから引き渡しを受けているため
即時取得が認められるからAはCに対抗できなさそうなのですが、
違うのでしょうか。
このへんよくわからないので教えてほしいです。
まっつんさん、コメントありがとうございます。
これは・・私の問題文の書き方が悪かったです。。
引渡しを受けたのではなく、譲渡契約をしたというつもりでした。
仰る通り、引渡しを受けていた場合は即時取得によってCが勝つことになります。
問題文を書き直しますね。
まっつんさん
問題を変更させて頂きました。
(分かりやすいよう、AとBの表記も逆にしました)
ご指摘ありがとうございます。